高校1年生~大学中退(後者は日本じゃなかったので学年の区分が違うけど、一応2年目)までずっとファインアート(Fine Art)について考える世界に身を置いており、以来「美術やその作品を題材にしたフィクション」がどうしてもどうしても読めなくなってしまっていて、あんまり触れてこなかった。
特に登場人物が絵描きだったり、半端に美術史の蘊蓄を語り出す者だったりすると、実際と現実のずれ(いや、フィクションだから当然なのに!)がおかしなくらい気になって体調が悪くなるアレルギー……みたいな状況に陥る場合が多かったように思う。
それが、友達に押し付けられるように手に取った「楽園のカンヴァス」はなんとか読むことができたので、同じ著者・原田マハの「モダン」も借りてみた。
物語を受け取れたのは、著者の経験に裏付けられた意味でのリアリティ、があるから。
たぶんその要因は、出てくる人たちが美術作品の製作ではなく、それを収める美術館で勤務していたり、好んで足を運んだ経験があったりと、MoMA(NY近代美術館)という施設に関係する複数の視点で描かれた短編集だからなのかも。
MoMAが語る人々のおはなし、かもしれない。
収録作の中で好きだった「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」には最もその趣があって、広がりを感じさせた。