数日前からストームグラスの内部が吹雪みたいな様相で、できる結晶が大きく、中心の山が白く閉ざされている。
ガラスの山といえば、脳裏に浮かぶのは昔話。それもヨーロッパ各地に残る類の。
有名なのはノルウェーの童話に登場するものや、グリム兄弟が収集した話の数々だが、私にとってはかつて買い与えられた偕成社の本(学年別新おはなし文庫の一冊)に掲載されていたポーランドの童話、「ガラスの山 (Szklanna Góra)」が最も印象に残っているのだった。
これはアールネ・トンプソンのタイプ分類(昔話の類型)では530番、「ガラスの山のお姫様」に振り分けられている。
つまり世界中に似たような物語があるということ。
ポーランド童話に登場するガラスの山には、頂上に黄金の林檎のなる樹が生えている。
ヤマネコの爪と、ワシの翼の力を借り、騎士が斜面を登る。
周囲には過去、登頂に失敗した他の騎士たちの骨が積み上がり、死屍累々としたありさま。
グリム童話「七羽のカラス」に出てくるガラスの山も、死や死後の世界を象徴しているように思える。
でもそれは物語の中で、生者の住まう領域と地続きの部分にあって、隔絶されてはいない。それが「一次元的な昔話」の興味深いところでもある。
私は球体の中の綺麗な山をじっと見ている。