『生きづらい明治社会
不安と競争の時代』
慶應の経済部の教授、かつ歴史学者の松沢裕作 が著者。
岩波ジュニア新書ということで優しい文体なんだけど、これがめっぽう内容が濃かった。
7章立て、明治初期のデフレ「松方デフレ」や都市の最下層労働者の貧民窟、小さな政府のウンコ似非生活保護「恤救規則」などなど、それぞれの章で明治の経済と社会施策を紹介しつつ「現在と完全な比較にならない」ことを断ってからの(誠実~!)現代社会との相似性を述べる。
「通俗道徳」(人が貧困に異陥るのはその人の努力が足りないからだ、とする考え方を表す日本歴史学の上での用語)が明治の社会政策の脆弱さにつながっているのではと問題提起。「じぶん、よく風邪をひくのでこういうのうんざり」というアプローチも好きさ。
おれなどはこれから福祉の勉強をしようとしているので、現憲法以前・・・明治憲法での福祉事情を経済絡めて紹介してもらえて勉強になったしヘドが出そう。
さすが経済学部の歴史学者、双方の強みを活かした明治の切り方はめちゃくちゃウマいし、
あとこの人、ジェンダー観めっちゃ安心・・・女性は元より男性学的にもマッチョにうんざりしてる感じで読んでて楽です。超権威なのに・・・
岩波の『世界』でもすごくいい論考を書いてて、そこから伝っていったんだけど・・・こういうひとの書くジュニア文庫やジュニア新書は読みやすいのに間違いがない。
もう少し突っ込んで調べければ巻末の参考文献を辿ることもできるし、ジュニア文庫はありがてえ。