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差別的表現を含みます 

赤坂憲雄『排除の現象学』
岩波現代文庫版P.253ーP.254
“犯罪という悪を病いに還元する方法はおそらく、人間だれしもが避けがたく抱えこんでいる悪への可能性、そのあらわれとしての犯罪、それを病いという了解しやすい文脈のなかにおきかえ、犯罪そのものの無気味さ・わけのわからなさを無化しようとする試みである。犯罪が病いのあらわれ=症状にすぎないとすれば、犯罪はけっしてメッセージないし意味ある行為として解読されることがない。犯罪という鏡のおもてに映しだされる、人間という不可解な存在の昏がりを覗きこむ作業は、周到に回避される。
しかし、あらためて問われねばならない。人は分裂病だから、あるいはノイローゼやアルコール中毒症だから、見知らぬ他人を刺し殺したり放火したりといった犯罪をおかすのか。そうしたノイローゼや分裂病を犯罪の主体とみなす司法精神医学的な了解に寄り添い、身をゆだねるわけにはいかない。そこにはあきらかに、わたしたちを幻惑する詐術がひそんでいる。犯罪が精神障害(妄想・幻覚など)によるなんらかの影響をこうむっていることは認めるとしても、病いが犯罪という社会現象の原因であり、主体であるなどとはかんがえられない。せいぜいのところ、それは犯罪の契機なり背景なりの一部をなすにすぎないのだ。”

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