3月の300字企画に参加してきました!
お題は「酔う」です。
ごらん、あすこにピンクの象が見えるぞ… :ablobcat_kurukuru:

300字小説企画さんのTwitter(X)→
twitter.com/mon300nov

フォロー

『酔余のこと』 

 盃に落とした視線を上げると、夜空に月が三つ浮かんでいた。金と、銀と、底なし沼のような黒い月だ。
 向かいの席では水玉模様の大きなねこが、鼻先についた泡を前脚で拭っている。
「私は酔っ払っているのかな」
「なにを今更。ここにいるやつはみんなとんでもない酔っ払いだよ」
「君はとてもそんなふうに見えないけれど」
「しらふのねこが、そこいらの人間と仲良くひげ突き合わせて、注いだり注がれたりなんてするもんかい」
 暗闇に浮かんだ椅子に座って、私たちはたらふく飲んだ。大きなねこは拡張を続け、空の月は十まで増えた。ほうき星の尾。渦巻く光。爆発する。
 もしも明日がまだあるならば、私は頭痛に苦しむだろう。

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。