小高に「おれたちの伝承館」、原発事故考え直して...アートで伝承

 東京電力福島第1原発事故の教訓を伝承する手作りの美術館が12日、南相馬市小高区のJR小高駅近くに開館した。その名は「おれたちの伝承館」。現代美術家らが空き倉庫を改修して美術館に仕立てており、原発事故の災禍を伝える絵画や彫刻、写真など計50点の作品が並ぶ。避難指示解除から7年の節目にオープンを迎え、館長で写真家の中筋純さん(56)=東京都=は「アートがもたらす優しい問いかけを通して、原発事故を考え直してほしい」と思いを込める。

 美術館を主宰するのは、全国各地で原発事故に関する芸術祭「もやい展」を開いてきたアーティストら。代表を務める中筋さんが昨年末、同市小高区の双葉屋旅館を訪れ、地元住民と交流したことがきっかけだった。空き倉庫が利用できると知った中筋さんが仲間と改修を始めると、住民らもボランティアで協力した。

 中筋さんは東日本大震災後、原発事故の影響が大きい浪江町や大熊町で取材を重ねた。「復興が進む中で原発事故を伝えるものが町から消えていく」と危機感を抱き、アートによる伝承施設をつくることができないか模索していたという。↓

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 展示品のうち、南相馬市鹿島区出身の画家坂内直美さんの作品は、朝焼けに染まる南相馬の美しい海を描いた壁画だ。

 除染で出た土の仮置き場のそばで地域の例大祭を行う様子をとらえた写真などもあり、故郷の尊さを問うメッセージ性の強い作品が多い。

 「おれたちの伝承館」という名前には地域の高齢者らが男女問わず使う一人称「おれ」を重ねている。中筋さんは「双葉町にも(東日本大震災・原子力災害)伝承館はあるが、行政ばかりに伝承を任せるのではなく、民間で伝承していくことが大事だ」と話している。(坪倉淳子)

 「おれたちの伝承館」では14、15、23、29日、開館を記念した音楽イベントなどが開かれる。開館時間は午前11時~午後5時半(最終入館は同5時)。入館無料。8月16日までは無休で、8月17日~11月26日は金、土、日曜日と祝日に開館する。

 問い合わせはもやい展事務局(メール2021moyi@gmail.com)へ。

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