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leechangdong4k.com/
イ・チャンドンレトロスペクティヴ4K上映で『』(2007年)を観た。
悲しみの底から抜け出そうとする女性の葛藤を描く、とあるが、女性が望む生き方を自ら選択できない社会のなかで、常に“奪われる”人生を送ってきた主人公シネが、ありのままの自分を受け容れて生きていこうとするまでの物語に思えた。
夫は他のひとに、息子の命も、おそらく父親からは未来の選択肢を奪われ続け、その憤りを表にあらわした時、頭に置かれたあの掌は辛かったね…という肯定であり、それはたしかに彼女の慰めになったのだと思う。ただ、その後宗教活動にのめり込むシネの姿に、観ている私は“信仰”の想いをあまり感じ取れず…案の定、刑務所でのシーン、自分が主体で思い描いていた幻想は砕かれ、根本的には何も変わっていない彼女の内面が露呈する。その後“奪う”側になってやろうと抗うが、結局は自らの命さえ奪うことはできなかった。
自分に気がある男が、どうしても「ないわー」なのもリアルで、ソン・ガンホ演じるジョン社長は後ろから、鏡越しに、シネの前に立って…と彼女を見つめるシーンが何度もあるのに、徹頭徹尾視線が向き合わない演出、男のわかってなさの表現が秀逸。
まさに文学を映像化した作品、という印象

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