モブ部下ちゃん目線の結婚後ふるあず妄想 

降谷さんと梓さんが結婚し早○年。
私の上司でずっと憧れと恋慕を抱いていた降谷さんが結婚した時はショックだったが彼の奥さんである梓さんの優しい人柄に触れ、彼女からの差し入れに胃袋まで掴まれてしまい私は今では上司の降谷さんより奥さんの梓さんが推しになった。

上司である降谷さんは相変わらず多忙でなかなか帰れていない。
夕刻、私は書類を提出する為彼のデスクの前に立つ。提出した書類に目を通し「ご苦労」と声を掛けてきた。
彼に一礼し自身のデスクに戻ろうとすると
「あ、待て」
降谷さんに呼び止められた。何か書類に不備があったのかと振り返る。
降谷さんは周りを気にするように声を潜めながら
「君に聞きたいんだが…オススメのコンビニスイーツってあるか?」
と尋ねてきた。
「オススメ…ですか?そうですね、最近期間限定でチョコミント味が出てますけどミント系だから好き嫌いがあるかもですよ」
「それは大丈夫だ」
「差し入れ?あ、もしや奥様にお土産ですか?」
奥さんのあの可愛い笑顔が浮かんだ。
少しの沈黙の後、降谷さんはポツリポツリと口を開いた。

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「……実は、あずさ…嫁の誕生日が今日だったのを忘れてたんだ」
「はぁ!?」
まさかの真実に驚愕し、大きな声が出てしまった。
自分の素っ頓狂な声に他のデスクの面々も反応しこちらに視線を向けた。
「ケーキ予約はしてなかったんですか?」
「………」
降谷さんは押し黙っている。
“否定しないという事は肯定ととる”
目の前の上司の教えが今大いに役に立っている。
「じゃ、じゃあ、お休みの日に盛大にお祝いするんですか?」
「いや、まだそこまでは…考えてなかった…」
「ちょっ、何やってるんですか!?」
私の推しの誕生日を忘れていた事に呆れと怒りが沸いた。「ダメです、コンビニスイーツで済まそうなんて!」
周りも何だ?と集まってきた。
「今すぐケーキ買いに行ってください!一緒に花束の一つでも買って!」上司である降谷さんに一気に捲し立てる。
私の言葉でたじろぐ珍しいというかレアな姿を見てしまった。
なんだ、降谷さんに対してと先輩が窘めてきた。私は早口で事のあらましを伝えた。

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「それは降谷さん、一大事じゃないですか!買いに行ってくださいよ」
「いや、まだ仕事…が」
降谷のデスクには人が集まってきた。
「あとは自分達でも対応できるんでやっておきますよ」
「あ、ここのケーキ屋さんまだ開いてるっすよ」
「○○パティスリーのフルーツタルトが美味いって嫁が言ってました」
先輩達も降谷さんの背中を押し、中にはグーグロで近くのケーキ屋を検索してる先輩もいる。
「ってか今すぐ行ってください!只でさえ帰れてないんです。今日くらい帰ってください、このままじゃ奥様に愛想尽かされますよ!」
ぐっ、と息を飲んだ降谷さんに対し私をはじめ先輩達も力強く頷いた。
それを見た降谷さんは自嘲の笑みを浮かべ
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらう。悪いが後は頼んだ」
上司はジャケットとカバンを掴み足速にデスクを後にした。
廊下からは降谷さんの駆け足が小さくなった。

モブ部下ちゃん目線の結婚後ふるあず妄想 

「さーってと、ぼちぼちやりますか」
先輩の一人が首を回しながら呟いた。
「降谷さん嫁さんのおかげで無茶しなくなったのになぁ」
「ホント、結婚して丸くなったよな」
「そんな素敵な奥さんの事、また蔑ろにしたら私…降谷さんでも許さないんだから」
頬を膨らませる私に
「今回はお前の手柄だな」
デスクに向かう先輩が私に向かってヒラヒラと手を振りながら労いの言葉をかけてくれた。
あと一仕事だと気合いを入れながら伸びをする。
窓の外を見ると薄暗くなった空に一番星が輝いていた。

【END】

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