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『その土曜日、7時58分』(2007年)を観た。

 
 すごかった、、、これが80過ぎの御大の遺作だなんて。脳は30歳のままな気がする。

 時間軸は1本ではなく、各人の視点からの話を語るために何度も時間が戻る(その戻るときのバチバチバチッがかっこいい)。
 お金が人を狂わせる。魔が差して会社のお金に手をつけた兄と、どこにでもいそうな金欠で考えの甘い弟。罪と嘘を隠すためにまた嘘を重ねる。「自分は賢いと思っているけれども実際そこまで賢くない」人の演技、天才的。このビミョーな愚かさ、弱さ、フィリップ・シーモア・ホフマンの真骨頂。なぜ死んでしまったの(涙)。

 2人の生い立ちは詳しく語られないが、父と息子(特に兄)の間には愛情も信頼も足りないようで、兄がなぜ簡単に心理的なハードルを超えて犯罪を思い立ったのか分かってくる。謝罪にむしろ怒りが沸き、車で泣く夫、横で当惑する妻、胸が痛い。
 犯人を探し始めるあたりからの父の表情は、妻に先立たれた悲しみとかではない。あの手際よさ、賢い手口、昔はカタギではなかったと分かる。うますぎて鳥肌が立つ。悲惨すぎる結末にうなだれるより「すごいものを観た」という満足感でいっぱい。(冒頭のシーンは一瞬で忘れたw)



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