『スリー・ビルボード』(2017)を観た。
こういう人は、きっとこうなるんでしょ、という安易な予想を鼻で笑うように裏切る。
だれもが、表には出さないでいる一面を持っている。
誰もが、思い込みや突発的な言動、後悔の繰り返し。
それでも、それでも人は変われるのではないか。
役者全員すばらしかった。フランシス・マクドーマンドの凄み…表情をほとんど変えずに、あんなに心の動きを繊細に表現できるものなのか。ものすごい悲しみ、ものすごい怒り、ものすごい後悔。冒頭、看板を見てひらめいてからは、「動く(たたかう)=生きる」。決して感情的はないし、どちらかといえば思慮深い。敵の家族は敵、などとも思っていない。警察署を焼く前にきちんと電話しているところとか。手紙を持ってきた奥さんにとっさにお悔やみを言えるところとか。太った歯医者とのやりとりとかも含め、すごい絶妙な繊細な間の取り方、さすがとしか言いようがない。
あの長回しのシーンも、すごかった。
そして病室のシーンでは、あまりの「優しさ」の表出に、むせび泣いてしまった。それくらい説得力ある演技だったのだ。
「犯人は誰なのか」は、正直、どうでもいいのだ。
最後のやりとり、希望が詰まっている。