アーシュラ・K・ル=グウィン『いまファンタジーにできること』(谷垣暁美訳、河出文庫)を読んだ。「内なる荒野」が特に好きだった。小説を「メッセージ」に矮小化することへの警鐘を鳴らしつつ、既存の価値観の外(=荒野)へと出ることについても語っていて、還元主義的でない、ひとつのどろっとした塊としてのフィクションについての論として読めるとても気高い文章だった。ファンタジー世界の構築を、近代化以前の世界認識の再構築と捉えている点も興味深かった。この切り口であれば、アーバンネイチャーを都市の内部におけるプレモダンの発見と読み替えることもできそう。