吉川賢『森林に何が起きているのか』(中公新書)、書き物の資料のつもりで手に取ったのだけど、今年読んだ新書のなかでも五本の指に入るくらいずっと面白い本で瞠目している。
ユーカリは燃えやすい植物だが、枯れ葉が溜まりすぎる前に林床だけを焼き払うような小規模な火事が起こり、結果としてほかの植物から身を守ることができている。そのため、ユーカリ林で火事を減らせば蓄えられたユーカリの枯れ葉のために一度の火事が大火事となり、コアラの命を脅かし、けれどさらに防火を徹底すれば今度はユーカリが優占種ではなくなり、やはりそれでもコアラは生きていけない。コアラがユーカリ林で生きるためには、定期的かつ小規模な山火事が起こることが必要である。みたいな話が次々と出てくる。
火災を防止することがそのまま生態系の保護に繋がるわけではなく、そこには人と森林と火のバランスを取ることの難しさがある、ということが(まだ序章を読んだだけだけど)語られていて、とても興味深い。