春日武彦
『老いへの不安―歳を取りそこねる人たち』
「とても○○歳には見えない」が誉め言葉になる昨今、老いはネガティブなものでしかないんだろうか。かつてあった老人ならではの役割が失われてしまえば、衰えゆく彼らは青年や中年の劣化バージョンになりかねないという言葉に胸がずきりとする。老いるとはどういうことか。きちんと年をとることは、ある意味きちんと死ぬことより難しいのじゃなかろうか? 文学作品や著者の体験を手掛かりとして味わい深い老いの姿も語られているけれど、やっぱりあれこれと考えてしまう。「老い」に関するもやもやを解消してくれる本ではない。それでも、もやもやの正体はなんとなく可視化されたかも。
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