和泉悠『悪い言語哲学入門』(筑摩書房、2022)読了。
日常に溢れる「悪口」や「悪い言葉」に焦点を当て、それらの言葉が持つ意味や機能を、哲学的な視点から深く掘り下げる。
意味の外在主義においては、ことばの意味――どの語句が何を指示しているか――は公共的で客観的な事実であり、個人がコントロールできる範囲を越えている。よって「差別の意図はなかった」は謝罪になっていない。
「言語使用の第一義的役目は、心のメッセージを相手に伝えることだ」と考えるのは神話的。
権力の序列関係などが発言の評価に決定的な影響を与えるため、広い文脈・背景をしっかり考慮に入れるべき。
著者は「ヘイトスピーチ」に対して、自主的に特定の語彙の使用をやめる、規則として特定の表現を制限するといった制約を、十分に正当化できる場合もあるという。
ユーモアをたっぷり混じえた文体ながら、「意味論」などにも接することのできる本で、学びも多かった。「意味論」はもう少し勉強してみたい。