宇沢弘文『社会的共通資本』(岩波書店、2000)読了。
宇沢は現代社会における経済成長や社会の持続可能性を実現するために必要な概念として「社会的共通資本」を提唱する。宇沢の定義する社会的共通資本とは「特定の個人や企業に帰属せず、多くの人々が利用し、その便益を共有する資源や制度」のこと。社会的共通資本は、 それぞれの分野における職業的専門家によって、専門的知見にもとづき、職業的規律にしたがって管理、運営されるべきで、社会的共通資本の管理、運営は決して、 政府によって規定された基準ないしはルール、あるいは市場的基準にしたがっておこなわれるものではないとする。
宇沢が論じる「社会的共通資本」は「農業と農村」「都市」「学校教育」「医療」「金融制度」「地球環境」の6つ。
新古典派経済学や反ケインズ経済学、ひいては新自由主義に対して鋭い批判があり、約四半世紀前の書物ながら現代につながる視座だと瞠目した。
いまなら「ケアワーク」も「社会的共通資本」に入れられそうである、とも思った。
部分的に個人的な思い出が語られるところ(一高時代の農村出身者の友人たちのことやケンブリッジ大学でのこと)があり、その部分も興味深く読んだ。
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