メンタル強強男と彼のお姫様のバレンタイン話込みの文具店シリーズ番外編です
酔っ払いショコラ
ベンジャミンが私の相談事に重々しく答えた。
「酔ったふりして甘える。これしかないわ」
ちなみに相談内容は「どうすればロックマンに対し恋人らしい接し方が出来るのか」だ。今更態度を変えるのは恥ずかしい。でも少しぐらい甘い雰囲気になりたい願望は私にもある。
有り難い助言だが私は首を横に振る。
「無理」
「無理じゃない。するのよナナリー」
「二樽飲んでも酔わないって知られてるから」
「何でロックマンの前で二樽も飲むのよ!」
「ロックマンの前で飲んだんじゃなくて私が飲んだところにあいつが来たの!」
「言い訳しない!」
本当なのに。
しかし親友はそこで私を見捨てる事無く新たな助言をくれた。
「普通のチョコだと思って沢山食べてたらお酒入りで予想外に酔っちゃった作戦よ」
ベンジャミンが過去に読んだ恋愛小説にそういった場面があったそうだ。ありがとうベンジャミン、件の作家さん。
結論から言う。ウイスキーボンボンを購入する瞬間を、驚きの遭遇率を誇る金髪男に目撃されこの作戦は始まる前に頓挫した。
ただし、菓子を買うだけにしては深刻な顔だと見咎められ事の次第を洗いざらい吐かされた私は、やたら上機嫌のロックマンの膝上で至近距離からふにゃけた笑顔をたっぷり浴びる羽目となった。思ってた甘い雰囲気と違う。
#1T67SS
自分のだって選びたいじゃない
1月下旬、某日。次の休日はデートをしませんかと恋人にお伺いを立てると、笑顔で一蹴された。
「バレンタイン前で忙しいから無理!」
付き合いの長さに反比例して滅多に見られない満面の笑顔は大変愛らしかったが、内容は全くもって可愛らしくない、それどころか憎たらしいものだったので、すべすべの頬を反射的につねった。
当然、お付き合い5日目の恋人の機嫌を損ねて喧嘩に発展した。
舌が肥えてるあんたに渡すチョコの試作をするんだから本当に忙しいの、とヘルが眉を吊り上げる。
僕は君から貰えたなら焦げていようが生焼けだろうが塩が入っていようが完食するけど。
それらの仮定は告げず「勝負じゃないのにそこまで気合いを入れる必要があるの?」と、やんわり尋ねる。チョコをくれるつもりがあるのは嬉しいがデートを断られたのが結構悲しかったので。
するとヘルはきっぱりと。
「あんたにあげるんだから妥協出来る訳ないでしょ」
「……そっか」
「あと百貨店回りたいし」
「ん?」
「この時期にしか日本に来ない海外のパティシエさんが沢山居るの」
「ヘル?」
「催事場って太っ腹よね、まるまる一粒試食させてくれたり」
うっとり夢見心地で語るヘルに、そっちが本音だな、と僕はもう一度まろい頬をつねるべく手を伸ばした。
#1T67SS
最近はまほうけ67二次創作の民。成人済。
67に関する話は大体こちらでします。
中途半端なSSや、トゥート派生SSを投稿したりも。
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