臨時の業務はなんとかなりそうなのでこれを見てエネルギーを蓄えています(逆に興奮して放出してる説あり)
アプデのメンテが明けたら……
既存エリアからパチノに書かれてる新エリアまでのメインクエストの本筋に関係なさそうな旅の様子や新装備新アイテムあたりはSSをあげても大丈夫かなと判断しているので、皆様のご判断に応じて適宜よろしくお願いいたします。
私は普段の稼働時間外に業務割り当てが来たのを理由に午後休を無理やりもぎ取りました……カレーは今夜作る……
FCのメンバー一覧あたりを拡大するとわかるのか
小話 海外公式のヴァレンティオンポストカードネタ 無自覚片思いラハと片思いひろしの両片思い
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親愛なるヴァレンティオンへ
バラは紅く、スミレは青い。
サンドイッチを共に食べれば、俺はお前の瞳に溺れる。
星見の間 クリスタリウム ノルヴラント
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そんなポストカードが部屋へ届いていたのは、霊2月のある日のことだった。筆跡を見る限りでは憧れの彼、私にとって一番の英雄が書いたもののように見える。それにしては内容が不可解だ。まずヴァレンティオン、という言葉だが私には全く心当たりがない。名前のようにも思えるが、若者の間で流行っている言葉なのかもしれない。ただ、それを私への呼びかけとして使う理由がわからなかった。
そしてそれに続く言葉も不可解だ。始めに書かれた「バラは紅く、スミレは青い」というのは原初世界で知られている詩の一節である。確か原文では「砂糖は甘く、そしてあなたも」と続いていたはずだ。日常で使う際は前半のみを取り入れる場合も多く、この手紙も後半は彼が自分の言葉で書いたものなのであろう。有名な詩であるから、この言葉を彼が知っていること自体は不思議ではない。それを私に贈ってきた、というのがとても理解できないというだけで。
この詩は一般的に恋の詩として知られている。告白の際、花束に添えるメッセージカードのフレーズとしても用いられることが多いと言えば誰でも理解できるだろう。その詩を使ってカードを贈ると言うのがどういう意味か、彼は理解しているのだろうか。こんなの勘違いされても仕方ないぞと独り言ち、真っ赤になった顔を覆って目を伏せた。
憧れの英雄である彼から、こんな告白紛いのカードを貰って冷静でいられるわけがない。送り先を間違えたのかと何度も見直してみるが、間違いなく宛先は「星見の間」だと書いてある。そうなるとやはり私宛の可能性が高いのだが、サンドイッチをまた食べたいと言うだけならばこのような詩を使う必要はないだろうし……。一人で考えていても全くわかりそうにない。ヴァレンティオンという言葉も心当たりがないし、彼と仲も良く、さらに俗っぽい知識も豊富そうなサンクレッドに尋ねてみることにした。
「ヴァレンティオン? ああ、今はそんな時期なのか。さすがに俺はチョコの作り方までは知らないぞ? とはいえ料理が得意なあいつに相談するわけにもいかないか……」
サンクレッドに相談があると伝えて星見の間へと来てもらい、ヴァレンタインのことなのだがと尋ねるとすぐさまそんな返答が返ってきた。そんな時期と言うからには季節に関係する何かなのだろうか。そしてどうやらチョコも関係あるらしい。断片的な情報ではやはりよく理解できないため、やはり教えを乞う方がよさそうだ。
「あ、いや、そうではないのだ。そもそもヴァレンティオンというのが何かわからなくて……」
「…………知らない?」
ぽかんと口を開いたサンクレッドが私の方を見てから、マジかと小さく呟いた。彼は片手でガシガシと頭を掻き、どうするかと言って大きくため息を吐く。
「そんなにおかしなことだったのだろうか?」
こちらで暮らしていた間に聞いたことはなかったから原初世界に関する何かだとは思うのだが、驚かれるということはかなり有名なものなのだろうか。自分の知識が偏っていることはわかっているが、ここまで言われるほどだとは思っていなかった。少し落ち込んでしまい耳がへちょりと下がってしまう。
「あー……いや、おかしいってわけじゃないんだが……じゃあ誰からヴァレンティオンって聞いた?」
「その、恐らく英雄殿かららしきポストカードが届いて……そこに親愛なるヴァレンティオンへ、と書いてあったのだ……それで意味を教えてほしかったのだが…………」
あいつは……とまたサンクレッドはため息を吐くが、少し悩みながらもぽつぽつとヴァレンティオンについて教えてくれた。それはヴァレンティオンもしくはヴァレンティオンデーと呼ばれる祝祭のことだろう。そしてヴァレンティオンデーは大切な人、特に恋人や思い人へ想いを伝える日で恋人たちの祝祭と呼ばれることもある、と。
「こ、い……!?」
「特に相手のことを『ヴァレンティオン』って呼ぶのは、大切な人や特別な人って意味になる。まあ……つまり……そういうこと、だな……」
まあつまりそういうことと言われてもさすがに理解が追い付いていない。ええっと、英雄殿は私に親愛なるヴァレンティオンと書いてきていて、それは大切な人への呼びかけとして使われるもので、使われているのは恋の詩で……?
「…………は!?」
「あー、その……まあ詳しい話はあいつに聞くといい! 俺は無の大地の調査もあるからここで失礼するぞ! ここにはしばらく人を近づけないように言っとく!」
サンクレッドがそう言って退室したことにも気づかず、私は真っ赤な顔のまま床に座り込んでしまっていた。どうすればいいのかわからない。こんな状態であの人に会うわけにもいかないし、自分から話を聞くなんてこともできるわけがない。
「こんなの……どうすれば…………」
彼は憧れの英雄で、この世界に夜を取り戻した闇の戦士で、彼が私に何か感情を向けてくれるなんて考えたこともなかった。私が一方的に彼を想っているだけで、彼は私のことなどただ昔の知人で今はこの街の為政者と思っているくらいだと思っていたのに。
「たいせつ、など……わたしには……」
彼にそんなことを想われる資格などない。彼を利用した私には。それなのに、どうしてあなたは私にこんなものを、理解できないのに嬉しいと思ってしまうのだろう。ぐうっと胸元を握ったまま床に伏せる。こんな姿、誰にも見せるわけにいかない。サンクレッドもいつの間にかいなくなっているし、しばらくこうしていても大丈夫だろう。ちょっともう何が何だかわからないんだ。
フェオちゃんに「若木の書いていたポストカード、私の友に渡しておいたのだわ!」と報告された冒険者が全力疾走したまま星見の間へ飛び込んで来るまであと160秒。