【ブリックス・ホテル】
小高い丘をのぼったうえ、おおきなれんがの中に、そのおやしきは建っています。
誰が呼んだか、「ブリックス・ホテル」。たどり着けた人はみな、口をそろえてそのサービスを絶賛します。
おいしいお料理、清潔でひろいお部屋、けれど何よりいちばんに出てくるのは、青くて大きなうつくしい花。
この世のどんな疲れもたちどころに癒してくれる、金の花芯をもつお花なのです。
かつてこのあたりには、たくさんこのお花が咲いていたそうですが……、戦を嘆いたお花自身が、れんがの向こうに隠れてしまっているらしいのです。
ブリックス・ホテルにきた人は、いつかまた青いお花が安心して咲ける日がくることを、心から願って帰るといいます。
【オディール】
悪魔の娘、オディールは森の中でひとり待つ。
妖しく輝く羽、たおやかな肉体、魅惑の声。
だがその言葉に、真実が宿ることは許されない。
彼女はただ、誘惑するためにある。
彼女はただ、そのためにあるのだ。
今日も彼女は深い森で、冷たい湖面に浮かぶ。
「悪魔」の名から救い出してくれる誰かを待ちながら。
【お花拾いのティッシュケース】
「叶えたいことはなに?」
ちいさな枕に似たティッシュケースは、あなたに問いかけます。
あなたが夢を口にすると、ティッシュケースはこうこたえます。
「そうしたら、わたしの口にあるお花と同じだけの幸せを見つけてごらん。お花拾いだ。それができたら、あなたの夢は必ず叶うよ」
ティッシュケースはふしぎに思うあなたに、さらに伝えます。
「それまでのつらいことや苦しいことは、このティッシュに包んですててしまいなさい。大丈夫、どうしてもがんばれないときはわたしの背中をみて。幸福のクローバーが、あなたをいつでも守っているよ」
ミミィは、ほしふり川でくらす女の子です。
いちめんのほしくずをながめて、ぼんやりと空想をするのが大すき。
りょうていっぱいのキャンディ、どこまでも続くあったかいおふとん、そしてやさしくなでてくれる誰かの手……
でもミミィは、それがどうして恋しくなるのか、よくわかっていません。
ミミィはきょうも、ほしふり川で願いをかけます。
「おほしさま、ミミィにお友だちができますように」
かげもとさんのおよめさん。
ただのメンヘラだから気にしないで。
しゅみ おけしょう あみもの
ややニュートラルのブルベ冬だよ
宝物はかげもとさんとかげもとさんからもらったものぜんぶ