君は愛しのお嬢様(ちょっと飛んで)
某国の王族の係累が魔物に対抗しうる力を持つ氷型を国で確保しようと王族の中で唯一の氷型の王子と氷型の魔女を一同に集めて側室(ハーレム)を作ってしまえと安直な考えをする。
そのため、伴侶選びと言いつつ、その夜会に参加した女性たちは皆、側室候補で招かれた城の客間を滞在中のために用意された。ドーランと件の国が遠いこともあり宿泊を余儀なくされたが、歓迎の夜会の夜、ナナリーの元へ王子が夜這いをしにやってくる。なんでも、ここはもう側室のための城だから王子のお手つきは名誉なことだと言ってナナリーに迫るが、ナナリーの夜着に手が掛かろうとしたところで崩れ落ちる。
ロックマンが混沌の魔法を掛けたようだった。
「下衆め…」
倒れ込んだ男を雑に放ると、寝台の上で唖然としているナナリーを覗き込んで、「勝手に部屋に入ってごめんね」と。
思わずロックマンにすがりついてしまうナナリーを優しく抱きしめて怖い思いさせてごめんねって謝る。
「これだから、君にやらせるのは嫌だったんだ。君が無意味に傷付くところは見たくない」
それに、僕も君に何かあったら調査とかすっ飛ばしてしまいそうだからね。と。
君は愛しのお嬢様②
「そもそもどうしてロックマンが従者なのよ」
ロックマンは絶対、従者の顔してないと思う。こんなキラキラしい顔面の従者がいてたまるか!
「そんなことないよ。顔のいい下僕を置くのは貴族ではよくあることだしね」
「自分で顔がいいって言った…」
「謙遜しても仕方ないことだろ」
「君は僕を見せびらかしながら参加すればいい。ドーランでは貴族と平民の婚姻は成されないしね」
「見せびら…かす?」
「潜入して真意を探らなければならないからね。主催者とは接触したいし」
パートナーでは趣旨を理解されてないと判断されて潜入調査としての役割は果たせないので、ナナリーの近くにいれてかつ自由に動ける従者が適任なんだとか。
それにしてもだ。
「私が向いてるとは思えない」
「同感だよ。君には絶対に無理だろうし、頼みたくはなかった」
「そこまで悪し様に言わなくてもいいじゃない!やってやるわよ!完璧なお嬢様に変装してあんたをギャフンって言わせてやるんだからっ」
「楽しみにしてるよ」
氷の乙女とシュテーダルとオルキニスの女王について
オルキニスの女王には弱みがあって、それは愛しい少女の存在で。生き返らせたいと願った気持ちをシュテーダルが利用したのかなって。
なので、シュテーダルは氷の血を集めろと言ったけど乙女とは言ってなくて、でもオルキニスの女王はその血で愛しい少女を生き返らせたいからその血は清い血でなければならず、募集を氷の乙女としたのかなとか。
実際はオルキニスの女王が集めたその血を使って(魔力は血に宿る)、シュテーダルは力を取り戻し、世界を凍らせる力の一端にしたのかなと。
今まで犠牲になった魔女たちの亡骸も奪われた血も最後まで出てこなかったみたいだし。
シュテーダルに取り込まれたのかなーと。
オルキニスの女王の愛しい少女がシュテーダルの見せた夢(夢見の魔物的な)なのか、実際にいた存在なのかは不明だけど、博士もそうだけどベースには何か弱みになることがあるんだろうな。
君は愛しのお嬢様
「潜入調査…?」
「そう。一般市民のハーレの職員である君を巻き込むのは不本意極まりないんだけどね」
「協力できるならするけど、理由を聞いても?」
不本意であるという意思を隠そうともせず、そう言う男は私の好きな人である。
「とある国の夜会へ潜入するんだけど、招かれる魔法型が決まっていてね」
「え?夜会で…?」
「ね。怪しいでしょ?」
「そうね。敢えて魔法型を限定して招待するなんて…」
「そうなんだ。そして、その指定された魔法型は氷型。特に氷型の女性が望ましいらしい」
なんでも、その夜会で高貴なる身分の方が伴侶を選ぶからだと言われた。
先のオルキニスの事件以来氷型はかなり数が減ったそうで、どこの国も氷型を手に入れようと必死だと説明された。
「それで、私がその夜会に行けばいいのね」
「身分や支度はこちらで用意するから。あと、伴侶選定という名目上パートナーが限定されるから僕は君の従者として同行するから」
「は…?」
長い髪の7ちゃん見て描きたくなりました
氷の秘薬
氷の魔女の血はどんな万病にも効く秘薬を作り出す。
そんな噂が王都を中心に流行っていた。
今更何をと思っていたが、一時のオルキニスの女王が氷の魔女を集めていた理由がその噂を裏付けるようにジワジワと広がっていった。
正確には乙女の血だったはずだが、その事実はゆがめられて伝わっていた。
「しばらく受付業務から外れる…ですか」
「ナナリーはウォールヘルヌスで魔法型がバレてるしそれを抜きにしても恩賞を賜った救国の魔女よ。こんな噂を誰が流してるのか分からないけれどしばらく人前には出ない方がいいと思うの」
「わかりました。私も資料室で噂の元になりそうなものがないか探してみます」
冒頭だけで長くなりそうすぎて供養
そうやって、僕を試さないで
「そういう言葉、誰にでも言ってるくせに」
そう言い放った愛しい恋人は、とても悲しそうな顔をしていた。
何事にも前向きで、だいぶ鈍い様子の彼女は恋愛ごとのには殊更弱く僕の言葉の真意を半分も拾いきれない。
それでもいいと前よりは伝えられることが増えた僕は浮かれていて。
その変化に彼女がどう思うかには至らなかった。
「本心なんだけどな」
「それでも、あんたにとっては女性はみんなそうなんでしょ」
「否定はしないけど」
「否定、しないんだ」
「君への言葉は特別だよ」
「特別?」
「愛しいって気持ちが乗ってるんだ」
「…」
「ふふ、可愛い顔してる」
言葉も意味も同じかもしれないけれど、溢れ出す好きという気持ちは君にしか届かないよ。
好きなものを好きなだけ。よく見えないものが見えてますがそっとしといてください。食べ物と推しの話しかしない。