素直じゃない彼らの攻防戦
最近バレンタインという異国の風習が話題になっている。女性が想い人にチョコを渡して告白するという行事らしい。愛を込めて恋人や伴侶に渡す場合もあるようなのでナナリーも飯食い友達に渡すつもりで準備していたはずだが、そう簡単に事が運ばないのがあの二人である。ハーレで人目も憚らず痴話喧嘩を繰り広げていた。
「君さ、何か僕に渡すものない?」
「……ないです」
「フェルティーナの家でチョコケーキ作ったらしいけど、一体誰に渡すつもり?」
眼光鋭く睨んでいるが会話の内容はチョコのおねだりだ。尋問みたいなことをせずに素直にほしいと言えば良いのに。なんで知ってるんだと悲鳴を上げた親友がすごい勢いでこちらを向いた。ニケなの!?と顔に書いてあるので首を横に振って否定する。絶対サタナースの仕業だ。
「誰にも渡さないわよ!」
「もしかしてお腹がすいて自分で食べた?」
「違ーう!とにかく渡せないの!私には無理!!」
しばらく攻防が続いていたがやがてナナリーが押し切られ、小さな箱を取り出す。潤んだ瞳でロックマンを見上げ……
「チョ、チョコと一緒に、私も食べてっ」
ロックマンが固まり、あちこちでいきなり物が燃えた。バレンタインは例の台詞を言うのが決まりだと吹き込んだ銀髪男は後日盛大に髪を燃やされた。
#1T67SS
どうしようもない恋だから
ぎゅっと握ったチョコレートの包装は、あいつの髪色の金。綺麗に結んだリボンは紅色で…。これが誰宛てなのか言わなくても分かってしまう。
いつ渡そうかと今日一日そわそわしていたが、放課後、漸くチャンスが巡って来た。借りていた本を返す名目でやって来た図書室だが、今日の目的はそれだけじゃない。チラリとあいつがいつも座っている指定席へと視線を向けると一瞬目が合った気がしたがきっと気のせいだろう。
今日渡さなければ意味がないのだ。早く、早く。気だけ焦るのに足が動かない。いつものくだらない馬鹿話や、喧嘩を吹っ掛けるだけなら簡単に出来るのに。
漸くあいつの側にある本棚の影まで近付いた。すぅっと息を吸って目だけ覗かせる。すると学校一美人で性格が良いと評判のあの子があいつにチョコを渡す所だった。
「っ!」
咄嗟に本棚の影に隠れ、しゃがみ込んだ。そしてそのまま逃げるように走り去る。あぁ、私何やってんだろう。周りに励まされて告白しようとしたが、このザマだ。好敵手のあいつが私をそういう対象で見てない事は知っていたのに。
「こんなもの…」箱に詰めた想いと共に捨ててしまおう。
思い切り振り上げた私の手首を誰かがふいに掴む。
「ちょっと待って!ヘル」
何故か珍しく焦った紅が瞳に映っていた。
#1T67SS
万全の状態で行きたかったのにボロボロ出来てる。憧れのカフェ
好きなものを好きなだけ。よく見えないものが見えてますがそっとしといてください。食べ物と推しの話しかしない。