研究者としての理想の姿と現実を僕と先生の関係を通して語られる優しくて厳しい話。若い頃に読んでもきっと泣けなかっただろう「大人」になってしまった自分が読んでよかったなという話だった。
ラストで沢村さんが死んだことにそれ以上言及せずにぱたりと本を閉じられたあの感覚は衝撃だった。先生は再び理想の世界で研究者として生きる、生きてほしいという願いが感じられる一方で、大人になってしまった僕は二度と理想の世界には戻れないのだという、他人の事象の抽象性のなさと好奇心でしかないというそれまでの本文で橋場くんが語ってしまったことが牙を剥いてきた衝撃のどんでん返しだった。良い話を読んだ。