セリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』を見た。島という冥界。
ここでもまたオルフェの物語が変奏されているのだが(ともすれば最も美しい変奏かもしれない)、その過程で率直な異性愛主義からは距離をとった一方、作品の構造としては、ある権力関係——創造するときに避けがたく生じる暴力的な関係はためらいなく温存している。結局のところたとえ女同士であっても、画家がモデルと対等であること(詩人がミューズと対等であること)の可能性を掘り下げるには至っておらず、その意味ではきわめて古典的であるのだが(それはそれでよい気もするのだけれどしかし)作中ではあたかも画家がモデルをまなざすのと同じようにモデルが画家をまなざしているかのような演出があるので首を傾げもする。
とはいえ紛れもなく美に満ちているのは確かで、こんなに心地よくてよいのだろうかと心のどこかで思いながら見入ることになるのだった。
テレビと女は殴って治らなかったら捨てろ