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那洲雪絵の『八百夜』おもしろろ。飄々とした不老不死の語り部が冬支度に追われる国を訪れ、昔々に仕入れたお話を語りに語り、人々を元気づけていく話。
なんだけど、その国では前王の時代にその王によって女性たちが虐殺されている。やがて王は殺され4歳の病弱な子どもが跡を継ぐ。政治は一族の男たちが占有して鎖国状態。さらにはどうも世界は一度壊滅でもしたようで、日本の各県を思わせる各国の人口は各々数万人と極端に少ない。
「千夜一夜」のごとくお話を続けることで人が人を憎まないでいられる場を作り出す主人公の懸命さ。またその民話由来のお話たちの元ネタに気づく楽しみ。病弱な現王のゆくえ、前王に殺されまいと抗い隠れた女性たちのその後など、雪に覆われた小さな国の秘密に迫ることが世界の秘密もを繙くだろう広大な気配がとても良い。好き。
個人的には3巻からノッてきた。リカとバイカの姉妹の出番が増えたからだな。

好きなところ(ネタバレ) 

傍系で一番王位に近いオッチャンに実は妻と娘がいたことが発覚。妻と娘は前王から隠れた先で他の女性たちと協力して里を開き、現在も山中で暮らしている。王の死をもって禍が去り、権柄を握る夫のいる王館に帰らないのは、まさに夫が権柄を握るから・女性たちが惨殺されるのを止めなかったからだと理由が明かされた時にしびれましたね…。しかも妻は当時政の場に参加して自身は王を止めろと何度も訴えていたというのが…。強靭に行動する女性たちが描かれる。
あとタザが死んだかもしれないと聞いて床下に隠れてマトが泣く理由がタザが唯一の友だった兄が可哀想だという理由だし、それを慰めるのが臆病から少しずつ抜け出してきたアケトだったのがね………。いや~、いい。

国の開墾にあたって王の始まりに渡された箱、王位を継ぐ儀式ではその箱の中をひとりで見る必要がある、人が生きるには衣食住も知識も安心も必要だが希望だってなくてはならない、主人公の語り部は生きる気力を持たず閉じこもっていた十歳の王にお話をすることで元気の炉に火を入れた、と繰り返し繰り返しやっているので「パンドラの箱」をやるんだろうなあと思っている。この物語における最後の希望がどんな形をしているのか非常に楽しみ。

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でも「神」の否定(信仰における神ではなく、自分たちには及びもつかない知識を授けてくれる個人を「神」として祀り上げる行為)もしているので、直接にパンドラはやらんかもしれん

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