また、ユーゴ含めロマン派は一般にプロテスタンティズムよりも、「原罪」の観念を希薄化したカトリックに近く、その点この映画はやはりアングロ・サクソン的。
社会理論として考えた場合、プロテスタンティズムはカトリックと異なり、「自己」論中心で「政治秩序」論は希薄。
(ただし、ロックを国教会「寛容派」理論と考えると別。またヘーゲルを世俗化した最大のプロテスタンティズムの思想家と見ることもできる。)
「危機の17世紀」にはカルヴァン派の「抵抗理論」や「寛容論」なども仏語圏では現れましたが、その後衰退。
ドイツのルター派はむしろ世俗の国家への服従を説きました。E.フロムやH.プレスナーは「ナチズム」の起源をルター派まで遡らせますが、これはやや無理があります。
いずれにせよ、プロテスタント諸国では世俗国家が社会を管理するようになり、国家論はこの地域では衰退した、とは言えます。
これに対し、カトリックは中世においては地域・国家・国際社会の秩序の管理者であって、個人の「信仰」は二の次。ローマ教会の高位者も「聖書」などは読んだこともない人が多数派、むしろ教会法に精通。
教会法、つまり当時の行政法の専門化、ということ。
であるから、仏で世俗国家とカトリックの対立が最も激しくなるのは自然の成り行きだったかも。