B.スピノザーmultitudeの抵抗権を認めた唯一の思想家
さて、主権と社会契約論、そして契約論、という語彙群に戻ると、
multitudeを出発点に置き、社会契約によって「国家主権」が成立した後も、尚構成員に「自然権」場合によっては「抵抗権」を認めたのはB.スピノザだけでした。
ルソーは一度「社会契約」が成立してしまうと、「抵抗権」がないばかりか、「国家が死ね」と言えば「死ななければならない」とまで言います。
ここに、日本で有名なA.ネグリをはじめとしたフランスの左派がスピノザを「偏愛」する理由の一端があると思われます。
一応、ルソーについて補足すると、彼の政治理論が対応できるのは、ポリス程度の小規模の共同体の場合にのみであり、18世紀のように市場と社会的分業が進み、さらに「フランス」という中規模国家には適用不可能、としていました。
とは言いながらもフランス革命以降ルソーの「共和国」概念をジャコバン的に練り直したものがフランス共和制の主柱となったこともまた事実です。
また16世紀頃からイングランドで一般に使われ始めたnation が革命以降、一気に前景化し「State」と緊密な同盟関係に入り始めます。
Nationが神にとって代わる時代への突入です。