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Alison Rumfitt "Tell Me I'm Worthless" ファシズムやレイシズム、トランスフォビアなどをテーマにしたお化け屋敷物かつボディホラー。冒頭に注意書きがある通り、性暴力や自傷、ヘイト言説が描写されていてきついが、すごく複雑で文学だけができる方法で表現されていておもしろい…。
昔、無人のお化け屋敷に泊まった女性3人。そのうち2人はかつて親友同士だったが、その夜の出来事以来絶縁状態になっている。その2人(AliceとIla)と、お化け屋敷(House)の視点で交互に章が紡がれる。
2人はそれぞれの方法で現在もトラウマに苦しめられている。Aliceは白人のトランス女性で、住んでいるアパートにも心霊現象はついて回り、今は壁のシミを隠すために貼ったスミスのポスターのモリッシー(見られないように目は潰してある)に狙われて(?)いる。
Ilaはユダヤ系とパキスタン系の両親を持つシス女性でTERF。彼女の見解を地の文で読んだり、両親に説明しているのを読むのが今のところ一番しんどい。他方、かつて2人が親友だった頃、Aliceが酔って「イルザ/ナチ女収容所悪魔の生体実験」(ナチスモチーフのエロティック映画)を見せたことがあったり、なんというか、差別の構造とは多層的で複雑なのだと繰り返し描かれる

あと今の自分の境遇が影響与えてると思うけど、特に共感(?)したのは冒頭の、職場はhauntingだって話…。Aliceが、自身と似たような体験をしている人がいないか訊くために、「幽霊に遭ったことはある?」ではなく、「hauntingな体験をしたことはある?」と尋ねるようにしていたら、意外と心霊現象を体験した人の話を集められたけど、そうした体験の多くは自宅ではなく職場での体験だったと。
考えてみれば「ねじの回転」のブライマナーだって家庭教師の先生からしてみれば職場なわけだし、それらも、また現代の職場も、富める者が貧しい者を使用している構造は同様だし、心霊現象が起きるのもさもありなんだよね…(超絶意訳)みたいな話で、つら!!!!おもろ!!!!!ってなりました

読み終わった。あの夜、アルビオンで何があったのか?のシーンがめちゃくちゃ怖くて苛烈な暴力の描写で…また、Hannahの言葉も、過去の出来事も、すべてアルビオンは彼らの内心にある気持ちを増幅させた/表出させただけで、元から本人達の中にあったものだというのが…差別感情はすべての人の心の中にある、内容や対象が違うだけ、という。
あと、澱むように心に残ったのが、女性の言葉を信じろと言うけど、ここに2人の女性(AliceとIla)がいて、証言が食い違っている時にどちらを信ずるべきか/どちらの方がより「弱い立場」であるか?片や白人のトランス女性、片やシス女性でレズビアン、ネットで検索したら数値化できるスケールがあるからそれで入力してみたらIlaのが数値は上だったけど、〜って逆説的に延々述べているくだりがあって、この小説らしい、「,」で区切って延々文章をつなげた話し言葉っぽい書き方の地の文で、それゆえ臨場感も増し、かつそういう雑理論を地の文で語ることによりしんどさも増す。そうしてこの小説を読むことが自他の差別感情に曝露されることの追体験になっていて、つらいが小説としてものすごくおもしろくもある…。
怖くて気が滅入って、詩的でも映像的でもあって、すごくおもしろかったです。

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