【木村勝千代独演会】2024年11月23日(土)@アートスペース兜座
勝千代「宇都宮釣天井」
トークwith杉江松恋
-仲入り-
勝千代「大菅の蛇橋」
曲師:美舟
一席目は、本多正純が失脚する原因となった宇都宮釣天井事件を題材に、宇都宮市に伝わる民話が浪曲になったもの。勝千代さんが師匠直々に稽古をつけてもらった三席のうちの一席とのこと。これまでに聴いた勝千代さんの浪曲とは構造がだいぶ違っていて、節の部分が圧倒的に多くて啖呵が少ない。これを、入門当時の幼い勝千代さんは大好きだったというのだけれど、内容は陰謀の陰に散った男女の悲恋と悲劇の物語。ほぼ救いがない。でも、独特の構造と、その救いのなさが絶妙に響きあって、陰鬱ながらも非常にドラマチックで新鮮で、とーてもよかった。美舟さんの三味線もかっこよかったー。これはまた聴きたい一席だ。
そして休憩に入る前に、最近発掘されたという、11歳のときの勝千代さんがまさにこの「宇都宮釣天井」をうなっている音源(カセットテープ)を聴くという貴重な機会が到来。11歳だからもちろん声は幼いながらも、ぴーんと張った高い声に、ころころ回る節。やっぱり子供の頃からすごかったんだなー。子供が好む内容ではないけれど、やはり節で唄う部分が多いというのが大好きだったのだそう。
二席目は日光開山の由来を描いた一席。日光つながりというか栃木つながりというか。
このところ勝千代さんの曲師はずっとまみさんだったので、ほぼ2カ月ぶりに勝千代・美舟コンビを聴いたけど、やっぱり美舟さんの三味線が数段上だなという思いを新たにする。冴え冴えとした音がまず違うし、小気味のよさ、切れ味、場面に当てる音のうまさ。これをあの至近距離で聴けるのはまさしく至極の会だね、これは。