兼好「夏泥」
泥棒噺のなかではこの「夏泥」と「締め込み」が好き。襟元に縫い付けた隠し金まで渡してやる気のいい泥棒を軽快に。これまたマクラが面白かったな。今回の銀座の強盗はひと昔前なら考えられない。銀座愛ある強盗ならばこういうふうに入るはず……という妙に具体的なシミュレーションに笑った。
白酒「お見立て」
柳家系を聞くことが多いと、なかなか出会わない噺のひとつがこのお見立てかもしれない。志ん朝師匠のCDでさんざん聞いたし、現役なら一之輔師の(これも抱腹絶倒もの)を何度か聞いているが、白酒師では初めて。もうね、やっぱり田舎者の杢兵衛さんがあまりに強烈で。店の若いもんが喜瀬川花魁に刃向かわず、いいなりで、むしろいろいろな策略に感心しちゃうところが可笑しい。テンポよく、笑いの渦に気持ちよく呑まれた。ブクブク……
一席目か二席目のマクラで白酒師が語った内容も興味深かったな。寄席でかかる噺にも流行りすたりがある。昔はとにかく「野ざらし」や(もう一席挙げたんだけど忘れちゃったw)みたいなひとりキ●ガイの噺がとにかく流行り、そのあとすたれた。そのあとは「井戸の茶碗」がやたら流行ったが、師匠の雲助師は「あんな噺、どこがおもしろいんだ」と言っていたとか。善人ばかりが出てくる噺は噺家にとって面白みがない、とも。小ずるい悪党が好きなんだ、と。それもわかるけど、でもオレは井戸茶が好きなんだよー(笑)。