さん喬「死神」
一度下がって、題名不明の出囃子と共に再登場し、またマクラもふらずにいきなり「死神」。「らくだ」に続けて「死神」やった人がいまだかつていただろうか。さん喬師匠の死神は本当に怖いんだよ。死神に、この世のものならぬ妙な浮遊感があって、ふーっと降りてきてゆらっと揺れながら現れる。最後は、死神の勝ち誇ったような、あざけるような高笑いのなか幕が下り、閉じきってもまだ笑い声が響く。この演出は昔も見たことがあったが、昔はもっとかすかな「ひーひっひっひ」みたいな不気味な笑い声だった気がする。今日のは本当に恐ろしいくらい激しい高笑いで、まだ耳に残っている。怖いよー。すごい一席だった。
さん喬「百年目」
三席目もハードだったら耐えられないかもと思ったけれど、ようやく鞍馬獅子に乗って現れ、にこやかにマクラを。そこで語った内容が興味深かった。以前、この会は「さん喬十八番集成」というタイトルだったが、「集成だなんて」と、そのタイトルが気に入らず、今回からあわせ鏡に変えたのだそう(とくに意味はなく、可愛いんじゃないかな、くらいの発案だったとか)。まだまだひよっこだからもっともっと勉強して、もっともっとお客様を楽しませたい、とも。すごいな。今年75歳。いや年齢は関係ないにせよ、現代の名人ともいわれる大ベテランの言葉として思うとほんとにすごい。実際、精力的に独演会をやっているし。この新しい名前の会は師匠の挑戦の場になりそうだ。次回のあわせ鏡は9月だが、主催者の方が「事情があって終焉時間は遅くなりますが、すごい趣向の会になりますよー」といいながら先行販売のチケットを売っていた(最近、現金を持ち歩かないので、一度外に出てお金をおろしてきたよ)。目が離せない。