第五章 いまがその時間
タイムリーではない運動
“率直に言って、私が関わった直接行動作戦は数あれど、いまのところそのなかに、人種隔離という疾病で不当に苦しんだことのない者たちから「タイミングがいい」と見られたものはありません。もう何年にもわたって、私は「待て!」という語を耳にしてきました。これは黒人の一人ひとりの耳に馴染みのもので、心を突き刺すように鳴り響くものです。この「待て!」はまずもってつねに、「絶対だめだ!」を意味してきました。私たちは、ある高名な法律家の言っている、「あまりに長く延期された正義は、拒否された正義である」ということがわかるようにならなければなりません。”
バーミングハム刑務所からの手紙
『私たちはなぜ待てないか』キング,1964
“キングが言うのは、抑圧する側から「ちょうどいいタイミングでおこなわれたタイムリーな行動だ」と評価してもらえるような運動など、定義上ありえないということです。”
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721201-3
第一章 哲学を定義する
抵抗にいいも悪いもない
“抵抗は、それがうまくいくかいかないかという価値判断とは無縁です。
なるほど、戦略的な抵抗を企むこと、抵抗の有効な組織化を計画すること、要するに「勝つこと」を考えることにも意味がないわけではありません。勝てるに越したことはないでしょう。しかし、獲得されるべき効果や成果から遡って抵抗の是非を問い、良し悪しを判定するようなことにはまったく意味がありません。抵抗に、いいも悪いもありません。”
“皆さんは、叩かれて「痛い」と言っている人を見て、「きみが『痛い』と言って何の意味があるのか?叩いてきた奴に反撃しなければ意味はない。だいたい、その『痛い』という声は小さかった。どうせ言うなら大声で、相手に確実に聞こえるように言うべきだった」云々と批判するでしょうか?そんな批判は無意味です。”
“叩かれて「痛い」と言うこと、これはすでに抵抗です。(略)「もう、こんなことはいやだ」ということがおのずと発せられている。抵抗というのはそういうものです。”