『アイアンクロー』観た。映画館では初ショーン・ダーキンだ。出遅れたせいでファーストカットどうなるんだろう、どう終わるんだろうとかやけに想像が膨らんで考えすぎちゃったけど、ああそうくるのか!と。まさかあんなカタルシスがあるとは思わなかった。むしろ、そこへ辿り着くまでの受難劇だった。
家族を締め付けて人生に深く食い込んで蝕むアイアンクロー、銃と十字架とトロフィーを信じることの呪縛。ケヴィンが持ち上げるバーベルが、呪いと抑圧と責任の重さを物語る。同時に、イノセントな白ブリーフ(ザックは『ペーパーボーイ 真夏の引力』もそうだった)、パンパンに張り詰めた筋肉と裸足が彼の異質さを際立たせて哀しい。選ばれない者として選ばれし者。
不穏な亡霊映画らしいのは、リングと観客の間に広がる闇と、庭にぽっかり広がる空洞。重低音のドラムロールみたいな音楽。対戦カードが出るとこもやけに不穏だったよ。

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当時のプロレスにはそんな詳しくないんだけど(周りにはリアルタイムでのプヲタが多い)、ある意味裏切って、ある意味ちゃんとプロレスの本質を掬い上げたバランスだったかも。受けてこそプロレスだし、分厚い身体の重量感がずっしりと効いて、切実に「痛みの伝わる」受けをしてみせるザック・エフロンに今年のプロレス大賞を。ケリー演じるジェレミー・アレン・ホワイト、私は初めて観たと思うけど旬の人らしく彼の登場シーンは来たあ!ってスペシャル感があったな。

リック・フレアーのくだりも、ガッチガチのセメントしかできない(そう生きざるを得ない)ケヴィンが、ギミックを極めた本物のネイチには敵わねえと初めて脱力する(例えるなら、シェイクスピア悲劇にヒュー・グラントみたいな)…つまり、フレアー名人芸があの怒りのアイアンクローを引き出したのを悟ったように見えたな。ファンにはフレアー全然似てねえ!って言われてたみたいだけど、あの流れでここにくるのが納得の良い場面だった。

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