「わたしが知っている国々でも、盲人や外国人が道を聞いた場合、イギリス以上に親切にしてもらえる国、あるいは夜危険な場所がこれほどすくない国、また歩道からつきとばされたり、バスや列車のなかで席を奪われたりすることがすくない国は、他にはなさそうなのである。いまのように列車が混んでいるときでさえ、座席にオーヴァーコートを置いて席をたってから十分後にもどってきてみても、席はちゃんと空いているのだ。すでに通路まで一杯になっていても、他の乗客は、先にすわった者の権利を尊重するのである。列をつくる習慣にいたっては、過去五年か十年のあいだに、心理学者が条件反射と呼ぶものになってしまった。イギリス人を十二人あつめれば、ほとんど本能的に列をつくってしまうのである。」(ジョージ・オーウェル「不作法」)