この設定画とか見ると映像作品を手がける人たちってほんと凄いと思いますよ。
小説なら「百万の大軍」なんてほんの一文で済ませられるのに映画や漫画なら百万の大軍をきちんと描かないといけないから大変だ。
だがほの大変さゆえに絵には〝百聞は一見にしかず〟の力がある。
ひと目で人を魅了し、感動させる大きな力が。
小説、文章をきちんと読める人って実は限られているんですよ。
漫画は読むけど小説は読まない人って多いでしょ?
私も人に小説書いてるから読んでね、て言っても漫画なら読むけど小説は読まないとか言われますもの。
まして書くなんて論外で、そういう意味ではノベルアップ民て神だと思います。
『X-MEN2』で「火を操ることはできるけど火を生み出すことはできない」「だが人間から見れば神だ」てやり取りがありましたが、無から物語を創造できる物書きは神ですよ。
こちら2作品とも原作・脚本・監督いずれも塚原重義によるアニメーション映画となり『クラメルカガリ』は『バッカーノ!』や『デュラララ!!』でおなじみのラノベ作家・成田良悟が『クラユカバ』のスピンオフ小説として執筆したシナリオを原案として制作された作品となりす。
特筆すべきはその世界設定。大正・昭和レトロ+和風スチームパンクの世界はもはやそれ自体が一個の魅力的なキャラクターとも言えます。
海外の『スター・ウォーズ』オタクが「俺たちはSWという映画が好きなのではなく、SWの世界が好きなんだ」という発言をしていたのをどこかで耳にしましたが、この作品もまさにそれ。
正直物語云々よりもこの世界そのものに魅力を感じ、大いに惹かれました。
乱雑さと整然さが共存した世界は細部まで作り込まれ、作中ではすべて明かされることの無い数多の謎が嫌でも想像力を刺激して続編を求めてしまう。
なんかねぇ、この世界を舞台にしたTRPGとか遊びたくなるんですよ。
そういう作品。
もうヴィジュアルが凄い。
「SFってなぁ、結局のところ絵だねェ」という野田昌宏の言葉を思い出しました。
みなとみらいのキノシネマで『クラメルカガリ』と『クラユカバ』観ました。
https://www.kurayukaba.jp
炭鉱夫などの採掘業者がひしめく炭砿町、通称〝箱庭〟(正式名称不明)は〝虫食い〟と呼ばれる地盤沈下が頻繁に起こる事で町並みが刻々と変わる。
まるでゲームのフリーダンジョンのように日々変化するこの町では町並みを絵地図に描き留める地図屋〝箱庭紡ぎ〟という職業が成り立っていた。
箱庭紡ぎを営む少女カガリと、箱庭から脱出し日の当たる場所を夢見る幼馴染のユウヤ。
頻発する不審な陥没事故を発端にした町全体を揺るがす謀略に巻き込まれてゆく――。
『クラユカバ』
目撃者なし、意図も不明な連続集団失踪事件。その足取りに必ず現る不気味な轍の正体とは……。
調査に乗り出した探偵・荘太郎は手がかりを求めて街の地下領域〝クラガリ〟へと潜り込む。
そこで地下を根城にしている仮面の盗賊集団〝覆面党〟と黒鐵の装甲列車の激突に巻き込まれた事をきっかけに列車長タンネと出会う。
クラガリの深奥へと進む荘太郎はもっと昔からこの失踪事件に関わっていた失われた記憶を思い出し――。
ジャック&ベティで『映画の朝ごはん』観ました。
https://eiganoasagohan.com/
東京都練馬区にお店を構える『ポパイ』は先代の社長が東映大泉撮影所に知り合いがいた事が縁で撮影班に弁当を卸すようになり、今では映画やTV業界で働く人なら誰でも知るおなじみの弁当屋さん。
撮影班に朝ごはんを届けるためにポパイでは毎日深夜0時から大量の米を炊いて手作りで弁当を作り、配送車に積まれた弁当の大半がロケ隊の集合場所である早朝5時の新宿郵便局前へと運ばれていく――。
映画業界で働く人たちの食を担う弁当屋さんに焦点を当てたドキュメンタリー。
おにぎりとたくあん、唐揚げ(もしくは玉子)に缶茶だけのシンプルなお弁当はいそがしい中でもササッと食べて燃料補給できる完璧な形でいかにも日本人的。
シンプルな作りの弁当でも米を炊く係や玉子を剥く係などきちんと分業されて効率よく仕事を進める裏方の姿に感激、三角おにぎりにする型なんてあったのね。
配送する際に大量に駐車されたロケバスのナンバーだけで届け先を把握するとか凄い、自分には真似できない。この人たちどっかの増税クソ眼鏡よりもよほどいい仕事しているし能力も高いと思う。
観る前は飯テロスイーツ映画かと思いきやさにあらず。環境に恵まれなかった少年の苦難に満ちた人生の物語。
「失敗は負けではなく成長のチャンス」
「才能は闘志だ、だがカネを得ると闘志を失う」
といった科白の数々が胸を打つ。
タイトルにもなっているフォークを刺すと中からとろりとしたクリームがとろけ出すパリ・ブレストや作中で多く出てくるサクランボ形にチョコーレートコーティングされたフォレ・ノワールをはじめ、フォンダンショコラ、フィンガーフランボワーズ、タルトタタン、キャラメル・フィナンシェ、ショコラ・スフェール、サントノレなどなど――。
垂涎もののお菓子が次々と登場するのだが、物語の根幹には甘いスイーツどころか移民や貧困といったビターな現実が描かれており、フランスの華やかで伝統的な文化と貧しい移民の2世3世が結びつく内容は『オートクチュール』や『テノール! 人生はハーモニー』といった作品を彷彿とさせた。
お話自体は感動的であり、出自や血筋で個人を否定するつもりはないが「そもそも移民さえいなければそこから生まれる余計な貧困層も生まれなかったよね?」「貧困による治安の悪化、犯罪の増加もなかったよね?」と思ってしまう。
みなとみらいのキノシネマで『パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜』観ました。
https://hark3.com/parisbrest/
実母が育児放棄をしたため里親《フォスターファミリー》の家で楽しい時を過ごすヤジッド少年。一家団欒しながら食べる手作りのスイーツは彼の心に染み渡り、いつの日か自らが最高のパティシエとなることを夢見るようになっていた。
青年になり養護施設で暮らすことになったヤジットは詐欺まがいの手口でパリの高級レストランの厨房で働き始める。
180キロも距離の離れた職場を往復し、時には電車に間に合わず野宿しながらも必死に学び続けてパティシエとして頭角を現し、周囲に認めらてゆくある日のこと、そんな彼に嫉妬する同僚の卑劣な企みで職を失うはめに。
けれでも夢をあきらめないヤジットはピンチをチャンスに変えて念願のパティスリー世界選手権への切符をようやく手に入れる。
果たして彼は夢をかなえる事ができるのか――。
実在するフランスの人気パティシエであるモロッコ系移民のヤジット・イシュムラエンの実話をもとにしたサクセスストーリー。
実母との愛憎や養護施設や厨房内での人々とのやり取りがリアルに描かれ、主人公に対する共感が高まり自然に感情移入して物語に引き込まれた。
ノベルアップ+で小説やエッセイを書いています。
https://novelup.plus/user/681620221/profile
世の中には文章を書くのが好きで好きでたまらない。という人も存在しますが、私のような俗物はちがいます。
人が読まないとわかっているなら文章なんて書きませんよ。
だれかが自分の作品を読んで、さすがは忠行よ、おもしろいと、そう言ってくれるかもしれないからこそ、物語を書く。
ブラム・ストーカー、ジュール・ヴェルヌ、レイ・ブラッドベリ、クリストファー・リー、ボリス・カーロフ……。
俳優は銀幕の中で、作家は物語の中で永遠に生き続ける。
俳優と作家は不死者。
言葉を紡ぎ、夢を綴ることで生きた証を残したい。
それにより永遠の存在になりたい。