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『王とサーカス』著/米澤穂信

フリーの週刊誌記者が訪れたネパールで王族殺人事件が起こる。混乱する市街を取材する中、雑踏には新たな死体が現れて…という推理小説。

おもしろくて中盤くらいからぐいぐい一気に読んでしまった。推理小説というジャンルは作者の手の内で転がされるのを楽しむ分野と思ってるんだけど、とても楽しく転がされた。週刊誌がサーカスなら、推理小説も規模は違えどサーカスだな、とおもった。

どれだけ誠実に事象と向き合ったところで、物語になった瞬間から事実とは異なっていく。読者をサーカスに巻き込みながら、報道倫理や国外の貧困について真剣に(娯楽としてではなく)考えさせるようしむけるのは難しいな、というようなことを考えていた。ましてや国内で貧困が進行するいまは尚更。いや、別に推理小説がそれを担う必要もないのだけれど。

作中の時間は2001年でも、この本が出版されたのが2015年。2023年のいま、メディアは官邸主導のサーカスしか演じない。大刀洗さんはいま何を調査してるんだろうな。

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