サルア君と主人公氏が、なあなあで友達やらずに対立する間柄であることを「選んだ」の、よかったな。
しかしなんでこの二人の間にメッチェンが挟まらなくてはならなかったんだろうな。詮無いことだがいまだに考えてしまう。いやサルア君はいかにも男社会に生きる人間だからいいとして、カード最初に切ったのは主人公のほうから、というのが不思議といえば不思議で。

「やりなおせる、なかったことにできるという誘惑を否定してくれ」という告白にサルアは「それは一線を越えた話だ」と返した。オーフェンは重ねて「メッチェンの負傷もなかったことにできる」と言った……、という話であり、筋としては自然なものだ。なんでだ? と考えるほうが筋の通っていない話にみえるかもしれない。が、それでも「なかったことにしてはいけないということ、他者の誇りを奪ってはならないということ」の話になぜ女の肢体/死体が俎上に載せられねばならなかったのか、その意味はなにか、を考えたいわけでありまして。

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あー、書きながら「つまりメッチェンを軸にしてアザリーとクリーオウが対比されてないか?」と思ったけど、終端の場合は「召喚機を動かすリソースとなることを選んだアザリーの意思を損なうことになる」という話をやってるのかこれ。じゃあ鋏のクリーオウは? 見える部分では仮にクリーオウが暗殺されてもオーフェンは復讐しない、と書かれてるように見えるけれどもそれ以外になにが書かれているか。

「開戦」でオーフェンは脅しながらヴァンパイアを叩きのめすが、そのセリフはどこか自分自身に言い聞かせる雰囲気が漂い、本当にはやらないんじゃないかこの人と思わせる。「鋏」の葬儀のシーンも、オーフェンは自分自身の思考や感情から目をそらしながら話している(モノローグさえも)様子で、本音は明らかにしてこない。……「余人がいればサルアは本音を話さないだろう。それがクリーオウであってもだ」とは、オーフェンこそクリーオウがあの場にいたら言えない話をしたかった、ということなんとちがうか。

目をそらしている、というか「実際に発せられる言葉としてのセリフでも、内心の発露である地の文でも、明らかにはしないように自制心をはたらかせている」としたほうがよいな。

「なんでオーフェンさんは自分とサシならサルアは本音を話すと確信してるんですか???」とこの十年頭を悩ませていたんですが、霧が晴れたようだ。あと、わたしは「サルアはああ答えたがために、特にオーフェンの前ではどんどん本音を口に出せなくなっていったんじゃないか」と思っており、それだと余人がいれば云々と矛盾するよなあと気になっていた。こういう理路ならどうだ(どうとは)。

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