熊野純彦『レヴィナス入門』を読んで、まあちょっとフェルマイのことを他所へ置いておくと、これはとても『星の時計のLiddell』だなあと思った。ウラジーミルにとってのヒュー、ウラジーミルの世界にとってのヒューは、紛れもなく「他者」であり、「他性」を帯びている。ウラジーミルはヒューがそのような「異質な」人間だからこそ彼を愛しているが、彼はウラジーミル(やその他多くの人)の世界に馴染まないからこそリデルの手を取ってこの世を去ってゆく。愛している理由と別れの理由は同一なのだ。
しかもウラジーミルのヒューへの愛ゆえか、あるいはヒューのウラジーミルへの愛ゆえか、ウラジーミルはヒューやリデルの世界に「異邦人」としての居場所(のなさ)を与えられてしまう。ウラジーミルもまたヒューにとっての他者であり、異質な、愛すべき存在なのかもしれない。
今まで私は、ヒューにとってのウラジーミルが分からなかったのだけれど、この本を読んで初めて、彼もまたウラジーミルを、その他性ゆえに何かの形で愛していた、愛している、のかもしれないと思ったりもした。