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【ほぼ百字小説】(4958) なんだかわからないものを飼っている。なんなのかを尋ねられても困るから、こっそり飼い続けている。尋ねられても困らないように調べたこともあるが、結局なんなのかわからないまま飼っている。飼われているのかも。

【ほぼ百字小説】(4957) 台詞は喋れる。動きもやれる。だからヒトがやっていたその場面を再現できる。ただ、いつからか台詞がひとつずれていて、どうやらそれに気づいてない。まあ観るほうが頭の中でひとつずらせば内容はわかるからいいか。

【ほぼ百字小説】(4956) あいにくの雨だが、いい月だ。満月は頭の真上あたりだから、眺めるのにいちいち傘をどけなければならないが。しかし、こんな雨雲越しにでも月を見る能力は身につけたのに、まだ傘越しには見ることができないとはね。

【ほぼ百字小説】(4954) 明日は鼠婆さんを演じたときに書いた文章を朗読するつもりで、その準備の合間に図書館で借りてきた本を読んでいると鼠退治の話が出てきて、ハーメルンの笛吹きまで出てきた。借りてきた鼠。鼠婆さんが呼んだのかな。

【ほぼ百字小説】(4953) 機械店員に注文する方法を人間店員に教えてもらったので、さっそくやってみたら注文できた。こんなに簡単ならもっと早くやればよかった。あの人間店員にひとことお礼を言いたいのだが、あれ以来、人間店員を見ない。

【ほぼ百字小説】(4952) 豚汁の中に入っている。ぜんざいの中に入っている。大根おろしに埋もれている。きな粉にまみれている。四つの形態を順番に食い進んで、最初に戻る。その途中で杵と臼で餅をついて丸める。無限餅燃料サイクルである。

【ほぼ百字小説】(4951) つけばつくほど餅が湧いてくるあの不思議な杵と臼は、小学校の体育用具倉庫の奥に隠されていて、この新年餅つき大会のときにだけ使用される。そういう約束らしい。少子化で廃校になった今も、それだけは続いている。

【ほぼ百字小説】(4950) 狸が宝くじを売っている。お約束とは言え、狸の宝くじを買う者などいるはずがない。そう思っていたが、たちまち完売だ。空くじだとわかってあえて買うことで、自分の運を温存するのだとか。しっかり化かされている。

【ほぼ百字小説】(4949) 自分を作っている部品がひとつずつ死んでいくから、ひとつ死ぬとひとつお墓を作る。今日もいくつ目かのお墓を作った。振り返ると作ったお墓が並んでいる。お墓が作れなくなってしまったら、自分がお墓になればいい。

【ほぼ百字小説】(4948) 罪を犯しても自分たちだけは捕まることのない世界を作ることにまんまと成功した連中とそんな世界を作るのに協力して彼らに投票した連中が、まとめて地獄に送られる途中で見ている幸せな夢が、この世界なのだという。

【ほぼ百字小説】(4947) 初詣の帰り、参道の商店街で見覚えのない小道に首をかしげて入っていくと、クリスマスのイルミネーションで昼間のように明るい広場に出た。狸の仕業であることは、歩いてくるサンタクロースの尻尾を見るまでもない。

【ほぼ百字小説】(4946) えべっさんでビンゴ大会。商売繁盛の福笹の横、司会が番号を読み上げる。リーチからなかなか進まない。黒毛和牛肉一キロを見事ビンゴしたのは福娘、妻も娘もコシヒカリをビンゴ。リーチのビンゴカードを持って帰宅。

【ほぼ百字小説】(4945) 思いがけないところであの歌を耳にする。そんなときは、思わずいっしょに口ずさむ。あたりの様子をうかがいながら、つぶやくように、囁くように。同じようにしている人がいることもある。同じ架空の国の国民なのだ。

【ほぼ百字小説】(4945) 思いがけないところであの歌を耳にする。そんなときは、思わずいっしょに口ずさむ。あたりの様子をうかがいながら、つぶやくように、囁くように。同じようにしている人がいることもある。同じ架空の国の国民なのだ。

【ほぼ百字小説】(4944) フェンスで囲まれた空き地を猫が歩いている、と思ったら、フェンスの下にある猫の頭ひとつ分ほどの幅の隙間を速度を落とさず液体のようにするりと抜けた。なるほど、このための隙間。ではないだろうが、いい隙間だ。

【ほぼ百字小説】(4943) 怪獣が雨宿りをしている。通常兵器はまるで歯が立たず、街は蹂躙されるままだった。そんな怪獣が軒下で雨宿りしているのだ。あの怪獣は水に弱いっ。隊長は、廃墟と化した街で半分だけ残った羅生門の破壊を決断する。

【ほぼ百字小説】(4942) 雨の日に墓場に立っている。向こうが透けて見えるから幽霊かと思いきや、ちゃんと実体があって、透けているのは透明の物質だから。雨天に出るのではなく、普段から小さく草葉の陰にいて、水を吸うと膨張するらしい。

【ほぼ百字小説】(4941) 見た目が目玉にそっくり、というだけでなく、実際に目玉として機能する。後ろに伸びている尻尾のような部分は神経で、宿主の神経と繋がるのだ。ただし、手足が生えてくるまでの間だけ。目玉じゃくしと呼ばれている。

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