『古書発見 女たちの本を追って』久保覚(影書房)
ー本は、私たちの中にある凍った海を砕く斧でなければならない
-F.カフカ
著者の久保覚さんは『花田清輝全集』を事実上一人で完成させた名編集者。また在日コリアンとして朝鮮芸能史研究者でもありました。
本書は久保さんも関わった生活クラブ生協の『本の花束』に書いた書評エッセイをまとめたもの。
対象となっているのはすべて女性の書いた本です。
レィチェル・カーソン『われらをめぐる海』、イザドラ・ダンカン『わが生涯』、ルイーズ・ミシェル『パリ・コミューン』、ビリー・ホリディ『奇妙な果実』、ローザ・ルクセンブルク『ロシア革命論』、F.サガン『サラ・ベルナール』など。
日本人・朝鮮人としては崔承喜『私の自叙伝』、高井としお『わたしの「女工哀史」、幸田文『ちぎれ雲』、朴壽南『もう一つのヒロシマー朝鮮人韓国人被爆者の証言』、石牟礼道子『苦界浄土』、富山妙子『炭鉱夫と私』などなど。
S.ソンタグに関するついてのエッセイでは次のような言葉があります。「一見リアリスティックに見えて、実は高見から他人の努力をせせら笑っているに過ぎない、冷笑主義的対応ほど不潔なものはありません。」
この言葉、現代を真っ直ぐに射貫いている、と言えるのではないでしょうか?