「東京物語」では上京した笠智衆と東山千栄子夫妻は息子の家に何故泊まら(れ)ないのか?

実は、小津の「東京物語」は米映画のリメイクだからです。

そして、これは米英型核家族の「規範」の問題でもあります。

19-20世紀初頭の米では、成人したカップルはたとえ親子であっても夜、一つの屋根の下で過ごすことは禁止されていました。

これは、複数のカップルが一つ屋根の下で暮らす、ということが、性規範の侵犯に該当するからです。

ですから、親子の場合は尚更、になります。つまりそれは英米型の核家族規範の下では「近親相姦」を意味するからです。

原作の米映画では、州法によって禁じられている設定になっていました。

ですので、はるばる息子夫婦を訪ねた来た老夫婦は、息子の家に泊まることができません。

小津の「東京物語」ではそれを息子の「多忙さ」として描き直していました。

小津は世界的に評価が高いので、米国の大学の映画研究では教材としても上映されます。

妻を亡くしたあと、笠智衆が一人で育てた原節子が結婚する前に京都に二人で旅行に行く『晩春』。

ここで親子は枕を並べて静かに語り眠る、というところで場面は終わる。

すると米の学生はほぼ全員が「この場面は近親相姦を示唆する」と解釈するのです。

「我が谷は緑なりき」で結婚した兄夫婦が家族と同居してませんでしたっけ?

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「我が谷は緑なりき」の舞台はウェールズの炭鉱です。ウェールズはアイルランド、スコットランドと同様、ケルト文化地帯です。

そしてこの三地域とも「直系家族」地域です。

従ってウェールズ人が・・・特に炭鉱労働の場で・・・カップルが同居しているのは不自然ではありません。

監督のJ.フォード自身もアイルランド系です。

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