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『オフ・ブロードウェイ奮闘記』(中谷美紀)

1人3役が求められる演劇『猟銃』をブロードウェイで演じた中谷美紀の手記。1ヶ月に及ぶ公演はトライアスロンのようだ、というのが印象的で、ひとつひとつの舞台への集中以上に、全公演に耐えるだけのメディケーションが重要とのこと。その完走のために完璧なプロフェッショナルが役者のみならずスタッフにも求められる様子が淡々と描かれていた。
直接の参考にはなりそうにないが、プロフェッショナルの態度を垣間見ることができた。演出家の「演劇という黄金の牢屋」という台詞はなにかで使いたい。

『Django』(The Modern Jazz Quartet)

「モダンジャズを聴きたい!」って時にピッタリだと思う。ヴィブラフォンのミルト・ジャクソンが特徴的なカルテット。

『Gerry Mulligan Quartet Vol. 1』(Gerry Mulligan)

1952年リリースだけあって、シンプルな味付け。

『2040年 半導体の未来』(小柴満信)

読むに値しない。ラピダスの中の人が何に賭けているかをアツく語るが、まだ始まっていないプロジェクトなのですべてフワフワと雲を掴むような話。

『半導体逆転戦略 日本復活に必要な経営を問う』(長内厚)

読みましたといった感。最先端技術での多品種展開を目指すラピダスへの期待が過大に膨らんでいると冷静に指摘し、むしろ枯れた技術のJASMが生み出すスケールメリットにこそ日本の活路があると説く。ラピダスの多品種展開、つまりスケールメリットを追わないビジネススキームは日本の製造業の必敗パターンであると解説する。二社の対比が面白かったが、半導体の歴史については類書のおかげで頭に入っており目新しい気付きはなかった。日米貿易摩擦を研究した韓国が残存者利益で勝てたところはなるほどね感はあった。

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240702 平田オリザの『演劇入門』をエンタメ小説に適用するには - 箱庭療法記 yobitz.hatenablog.com/entry/20

青春ブタ野郎シリーズは、今年の8月、10月の続刊での完結が予告されており、他方で続刊に相当するパートもアニメ化されることも発表されており、先に読んでしまうか、アニメまで待つか迷っていたのですが、読む方の選択しました。続刊に相当するパートは評判が悪く、正直、読んで失望してしまうのでは、裏切られた気分になってしまうのではと恐れている自分がいました。でも、そういう恐れ、ある意味ではワクワクなのかもしれないけれど、そういうの込みでフルコミットすることを決めました。

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『青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない』(鴨志田一)

イベントの繋げ方(Yes, but...式)が巧み。イベントのためのイベント感、言い換えると「ダンドリ感」が薄い。それぞれのイベントが読者の感情を動かすことに寄与しているからだろう。

シーンの作り方には、例えば「葛藤」や「リアクション」から考えるという手法があるけれど、それらと平行してセミパブリックのバランスの手法を走らせるイメージですね。

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エンタメ小説では、大ざっぱに言って、空間や登場人物を使い捨てることができる。ここが一幕ものとの最大の違いだ。一幕ものでは、プライベートーセミパブリックーパブリックを、一つしか用意できず、そのために全体を通して空間や登場人物に関してセミパブリックを貫く必要がある。
対して、エンタメ小説では、一貫してセミパブリックである必要はない。むしろ全てがセミパブリックだったら読者は飽きるだろう。これをさらに広げて考えると、一つのシーンの空間や登場人物のそれぞれに三つの概念を当てはめ、複数のシーンでプライベートーセミパブリックーパブリックがバランスするようにできることに、複数のシーンから成る小説の醍醐味があるように思われる。
プライベートーパブリックーセミパブリックのバランスの視点から小説の全体を俯瞰してみようと思った。

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『演劇入門』(平田オリザ)

再読に次ぐ再読。今回はやや俯瞰して読んでみた。
本書はあくまで「演劇」その中でも「一幕もの」のための一冊。つまり、一つの場所や登場人物で繰り広げられる物語のための手引きだ。それゆえに当たり前なのだが、エンタメ小説やマンガといった複数のシーンから成る物語の作り方を教えるものではない。それを断った上で、やはりエンタメ小説にも適用できるノウハウが詰まっている。
一幕ものは一つの空間や登場人物しか使えないために、観客への情報の出し方が著しく限られる。本書の読みどころは、その情報の出し方のノウハウであり、最重要なのは「セミパブリック」という概念だ。プライベート(内部)とパブリック(外部)の中間に位置する。例えば、葬儀所のような。個人と親しかった親族(内部)ー仕事の関係者(中間)ー出入り業者(外部)が出入りする空間だ。三者の間の情報の濃度の違いこそが、情報を観客に与えるためのきっかけとなる。

amazon.co.jp/演劇入門-講談社現代新書-平田オリ

文舵合評会の二回目に参加させて頂きながら修了できなかった身なのですが、途中まででさえ、課題をやる度に普段使わない筋肉を使うハメになって自分の可動域が広がるのを体感しました。
長い小説を一貫した声(ヴォイス)で書こうとしているいま、改めて読み直すべき本だと思いました(というか、何度でも読み直すべき本であろう)(いったん頭から尻まで書けたら読み直してみよう)。
filmart.co.jp/pickup/32457/

『演劇入門』は私の「お話作り」のバイブルですね。
長いお話を作る前には毎回読み直しているんですが、演劇の舞台作り・台詞作りをエンタメ小説に適用する際の変更点もすこしわかってきて、演劇ほどの視覚的効果をエンタメ小説は有していないところがキーですね。
エンタメ小説では、舞台を言葉で説明せざるを得ない。わかりやすさのためには美しくない説明台詞も使わざるを得ない。だからと言って諦めるのではなく、台詞に役を割り振っていく。感情のため、状況の説明のため、物語の進行のため、単なるユーモアのため……。
そして、一連の会話の中でそれぞれの役をフュージョンさせる。登場人物に感情を惹起させつつそれ自体が自ずと次の状況を導くように、だとか、ユーモアで読者の認知を緩くしたところに状況説明を差し込む、だとか。
いま書いている原稿は、エンタメ小説のためで、きちんとしたエンタメ小説を書くには、私が好き勝手に書いていた二次創作よりもきちんと読者の認知に寄り添って台詞を増やしていかないといけないっぽくて、そのための台詞作り・会話作りの手法を日々考えています。

amazon.co.jp/演劇入門-講談社現代新書-平田オリ

『777』(伊坂幸太郎)

伊坂幸太郎はエンタメを書かせたらきっちり及第点を出してくれる。プロのエンタメ作家。
こわい男から逃げようとする記憶力抜群の女を、不運な殺し屋がなんやかんやあって助けるハメになってしまう密室エンタメ。伊坂は殺しのアクションを描けば軽快で、殺しのハウツーにはロジックもあり、読者が忘れた頃に姿を現すお手本のようなミステリも仕掛けられる。
映画にすると二時間に収まるし、映像としても見どころがあるだろう、こういう真っ直ぐなエンタメを読むとひたすら勉強になる。
最も勉強になったのは舞台選び。密室になったのは二十階建ての高級ホテルなのだが、高級ホテルだけあって空間にバリエーションがある。密室モノでも手札をシンプルにする必要は全くなくて、物語の要求に応じて増やしていいんだ。そういう発見があった。
数多いる登場人物の使い方も卓越している。同じ目的を有する複数の人物は要素が共通する一つのチームにまとめてしまって、読者の認知の負荷を減らしている。で、ミステリのタネはその認知の隙間に差し込んでおく。異なるチームはしっかり毛色を変えておく。重要な登場人物は一気に出し切ってしまう。重要じゃなくなったらとっとと退場頂く。見事。
amazon.co.jp/777-トリプルセブン-伊坂-幸太

『生成AI 真の勝者』(島津翔)

2024年春前後の生成AIを巡る状況を概観するには楽な一冊かしら。どの企業が誰と組んでいてどこに投資していて……という相関図を頭に描くのに使うイメージ。ラピダス社長の小池淳義氏と『半導体戦争』のクリス・ミラー氏のインタビューは必読。
ところで、フェイスブックのメタ社が開発中の生成AIであるMTIAについて「同社は、MTIAをフェイスブックやインスタグラムなどの既存アプリのコンテンツ・広告表示に利用するほか……」との記述があって、地球の限りある資源が詐欺まがいの広告へと消えていく様子が目に浮かんだ。
amazon.co.jp/生成AI-真の勝者-島津-翔/dp

『Think Fast, Talk Smart』(マット・エイブラハムズ)

会話を有意義にするための一冊。コミュニケーションのためには相手を「聴く」ことが大事だと聞かされてきた。だが、「聴く」ことが何を意味するか語られることは少なかった。本書はその「聴く」に紙幅を割いたことが特徴だ。
「聴く」とは何か。一言で言えば、相手のニーズを汲み取ることだ。この会話に何を求めているのか、どんな会話がされたら嬉しいのか。それを相手の様子から探すことである。
ただ、注意しなければならないのは、会話とは正解を探すゲームではないということだ。ニーズと正解の違いは何か? 前者は相手を思いやった言い方であり、後者は自分の満足のためのものである。会話は「聴く」行為であり、相手のためのものであり、その結果として返礼を得られる。
本書はさらに踏み込み、互いの「聴く」を導く構成まで説く。六のシチュエーションが例示されていたが、一つだけ覚えておきたい。
「何」ー「それが何」ー「それで何」の構成。まずトピックを提示し、続いて説明し、最後にそのトピックによってどんな変化が得られるか、を示す型だ。

ほら、この感想もそうなっているでしょう?
amazon.co.jp/Think-Fast-Talk-S

『Continuum』(Nik Bärtsch)

スイスのピアニストのNik Bärtsch(ニック・ベルチュ)の代表的な一枚。面白い! ミニマルミュージック的なリフレインが多いのだけれど、そこから徐々に展開していく感じが確かにジャズっぽさもある。他のアルバムも聴きたくなった。

私はシンプルで、白い服は基本的に買わない。ワイシャツも色付き。本当に必要なときだけ白。

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