『緊張しない・あがらない方法』(鴻上尚史) #読了 #よしざき読んだよ
俳優の演技のためのメソッドに「スタニスラフスキー・メソッド」というものがあります。本書はそのメソッドを噛み砕き、平易な言葉で、俳優以外の私たち普通の人が日常でも使えるようにするための本です。「日常で演技?」と思われるかもしれませんが、それこそがタイトルの『緊張しない・あがらない方法』に直結しているのです。
私たちは人前に立つときに、つまり緊張しがちな場面では、人からよく見られたいという自意識に囚われているのだと、著者は説きます。緊張から解放されるためには、その自意識から解放されることが必須なのです。では、どうやって? その方法こそがまさに「演技」すること。演技に集中し、五感をフル稼働させることで、自意識を後ろ側へと押しやることができます。
とは言え、演技、普通は意識してすることってないですよね?
本書はそのような普通の人向けの一冊です。演技するため、すなわち五感をフル稼働させるためには「与えられた状況」を事細かに具体的にイメージし、分析し、自らをその状況へと没入させることが重要です。状況を味方に付け、自らを自意識から解放し、緊張から自由になるための方法を本書は詳細に明かします。
『説明組み立て図鑑』(犬塚壮志) #読了 #よしざき読んだよ
あなたは「結論ファースト」一本槍で説明していませんか? 本書は一般的に説明に有効と言われている「結論ファースト」で上手くいかない大人のために書かれています。「結論ファースト」が上手くいかない理由は、二つあります。
一つ目は、人は「結論=ファクト」だけで動くようにできていないからです。むしろ、ファクトが先に出されることで反感を覚えることすらあります。説明を本当に届けるためには、相手の「感情」にフォーカスする必要があります。本書は、長年にわたって駿台予備校で「説明」してきた筆者が認知科学に基づいて相手の「感情」を動かすための型を解説します。計80の型が収録されていますが、本当に大切なのは、相手の「感情」に焦点を当てることともう一つだけです。
そのもう一つとは、相手を「知る」ことです。「結論ファースト」が上手くいかない理由と重なりますが、客観的なファクトは客観的であるがゆえに動かしようがなく、相手の「感情」に合わせてチューニングできないのです。そして、相手の「感情」に訴えるためには、相手を「知る」必要があります。つまり、相手を「知る」ための事前準備をどれだけ深く行えるかが説明の成否を決めるのです。
説明の究極的なコツとはこの二つだけなのです。
『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』(武田綾乃) #よしざき読んだよ
ギブ
内容としては、とにかく半導体のビジネス!ビジネス!ビジネス! 半導体はビジネスとして生まれたごく初期こそはペンタゴンが最大の顧客であったものの、やがて CEO たちは民生品の需要を重要視するようになる。1970年代だか80年代の話だが、2023年現在にもその構造が続いている。米中の半導体を巡る貿易摩擦もまさにそこが焦点であり、結局、軍事転用されている技術であるにもかかわらず、アメリカ企業にとって(ペンタゴンより遙かに)巨大な市場である中国が魅力的すぎる。それがゆえに中国への技術移転が進んでしまう──。そんなジレンマが現代の米中の摩擦を引き起こしている。現代に関する記述はやや危機感を煽りすぎ感もあったが、歴史をここまで詳細に書いた本はこれが初めてか。
【読みどころ】
・メインキャラクター全員を使った立ち回りで一息に全員のキャラ=能力を立てた点。とにかく立ち上がりが良かった。
・↑の上で、第一幕の終わり=第一プロットポイントでは主人公とその相棒に焦点を絞った立ち回りを描くことで、自然とキャラクターへの没入感を上げた点。読者の関心をコントロールするのが巧みだった。
・死者を操る〈死霊術〉が存在するファンタジー世界における政治家の葛藤=異能を公に知らしめるか隠し通すか迷う心理を第一プロットポイントの前に配置し、まさにここに切り込むことが物語の核になることを示唆することに成功した点。単なる立ち回り=アクション以外にも読ませ所があることを端的に示している。
ループものでは「やり直すことで人を救う」は割と定番なのだが、一種のレスキューとしてループ者を組織化したところに読みどころがある。
ループものの構造的な難点のひとつに「自覚あるループ者が限られている場合には、物語の語り手/語り口が制約を受ける」ことが挙げられる。すなわち、ループが起きていることを知っている読者はそれを知らない語り手には没入できない(なぜなら、それを知らない語り手は読者に既に1回起こった既知の情報しか語ることができないため)という難点があるのだ。さらに噛み砕くと、読者はループ者の視点から「しか」新しい情報を得られないということ。
本作は、それに対して、ループ者を組織化し複数のループ者を用意することで、語り手/語り口のバリエーションを増やした。一例として、巻戻士の師弟関係やライバル関係を、主人公とは別の視点を用意して立体的に語ることに成功している。
さらにループ者にそれぞれに固有の、時間をループする以外の時間を操る能力を与えている。当然、組織化されているので時間を操る能力を複数人で協力してより複雑化させることができるのだ。これにより、時間エスエフとして極めて奥行きのある読み心地を生んでいる。
@sworliteary 藤谷さんのマネージャー、うちのマネージャーだった?
@sworliteary ともに成そうや。
小説/ジャズ/中国茶。🌍は、読書・音楽・茶の記録について。🔒は、それに加えて日常について。