【奈々福なないろvol.6~すっとこどっこいフェス】2023年9月16日(土)

奈みほ・まみ「不破数衛門の芝居見物」
奈々福・美舟「狸と鵺と甚五郎」
~仲入り~
奈々福・美舟「丹野布衣左衛門行状記」

ワーグナーの「タンホイザー」を下敷きに、構想5年の創作浪曲「丹野布衣左衛門(たんのほいざえもん)行状記」。すっとこどっこいフェスという会の副題が示すように、本当にすっとこどっこいな男。空気が読めない、人の気持ちがわからない、でも自分の気持ちには妙に正直。そのまま滑稽路線で進むのかと思いきや、ラストが圧巻。圧倒された。なんてすごいんだろう。もう鳥肌が立って、女優さんじゃないけどいつのまにか涙がつーっと流れてマスクに染みていたよ。いやもうほんとにすごかった。どうしてくれよう。

隔絶した地で愛欲に溺れる→飽きて帰還→歌合戦→追放、ってあたりは原作を踏まえつつも、全般的にはコミカル路線。細かくあらすじを書くと大変なので割愛。ところが最後のところは原作と変えて、すさまじいラストが待っていた。エリの三味線だからこの歌が歌える、ホイザエモンの歌だからいつもは出ない音が三味線から鳴る。あれは浪曲愛を謳ったものだったのかな。と、今になって思う。諸国をめぐり、最後は江戸の浪曲師になり、のどをつぶして乞食となったホイザエモンとエリの再会。エリが死んだあと、エリの三味線が頭の中で鳴りやまず、その音を聞くと潰れたはずのホイザエモンののどから往年の歌が出る。三味線に駆り立てられるように、あるいは三味線によって狂わされて地獄にいざなわれるかのように、唄いながらホイザエモンは川に落ちて死ぬ。なんという最期だろうか。その最後の歌のシーンの恐ろしいこと美しいこと。力強さ凄まじさ。

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奈々福さんは本当にエンターテイナーだし、天才だと思った。発想の凄さ。構成や演出も凝っていて、要所要所に入る(日本語の歌詞の)タンホイザー序曲、巡礼の僧侶の鈴の音。歌もラップあり、ゴスペルを思わせる響きもあり。ご本人は詰め込みすぎなほど詰めこんだといっていたけど。美舟さんの三味線がまた素敵だった。息ぴったり。照明もシーンごとに変化してカッコよかった。まったく浪曲なんだけど、浪曲の枠を超えて、まさにこれも「歌劇」なのではないかと思った。オペラという意味ではなく、歌と語りで綴る大スケールの物語。今年聴いたいろいろな生口演のなかで断トツ一位かもしれない。
帰りの電車でも興奮冷めやらず。行ってよかったー。そして、ちゃんとあらすじを頭に入れて「タンホイザー」の序曲を予習で聞いておいてよかった。

前読みの奈みほさん、初聴きだったけど、声がのびやかで、人柄がとても可愛らしい感じで、啖呵もとてもよかった。

奈々福さんのもう一席は、タヌキの恩返しと甚五郎ものが一緒になったような楽しい一席だった。

ほほ〜ぅ、なるほど興奮して電車途中でLINEしてきたのが😅 分かる。
しかし、タンホイザーが浪曲にとは!もしかしたら他のオペラも浪曲に改作創作って出来るのかも。素晴らしい楽曲が無ければ、ツッコミどころ満載な話多いし、その不思議な魅力には共通点があるのかもね。奈々福さんって、素晴らしい才能のある浪曲師さんみたいですね。私、浪曲ってダミ声のおっさんの演芸とばかり思ってたけど、違うものが出てきてるのね。しかも女性浪曲師さんっていうのが素敵😍  

ダミ声のおっさん芸にあらず。一人ミュージカル、一人歌劇だよね。わたしは断然女流の浪曲師さんが好き。

奈々福さんは飛びぬけていると思う。単なる浪曲の技量というだけじゃなく(いや歌はめちゃくちゃうまいのよ)、それを超越した発想力・物語力・プロデュース力・大きな舞台を組みたてられる力みたいなもの。創作できる力というか。日本に来たら是が非でも聴かせる!

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