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白川紺子『九重家献立暦』

『後宮の烏』がおもしろかったので、作家買い。非ファンタジー。
瀬尾まいこと森絵都と宮下奈都を混ぜたような感触で、余計な装飾がなく自然な文体。
文章はやさしくてさらりとしているのに抉り方が鋭角で、錆びついたナイフで刺した後丁寧に捻ってこちらの出血をさらに煽るようなことする。

読後感が全然良くない。
「家族の再生の物語」みたいな説明を見た気がしたんだけど、別に全く再生してない。
「あの人も人間だ、だからあの人のことも悪いばかりとは言い切れない」「とは言えうちらみんなもう、どうしようもないな」みたいな、諦念の物語だと感じた。
諦念からしか顔をあげられないことってあるし、とても「健全」な諦念と思った。
つまり、読後感が悪いにも関わらず、おそらく私はこの物語を好ましく思っています。

「読後感が悪い」というのも、振り返ってよくよく、いや普通に考えてみたら「は???」となる感じであって、物語の幕の閉じ方は大変美しい。日常の美しさ。人間の内実など見向きもしない、見慣れて色褪せそうな世界の、いつも通りの美しさが終幕を飾っています。
気落ちして、息を詰めて、そのあとため息つきたいようなときにお勧め。なんだそりゃ。

amzn.to/3WQy5DM

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