最近観た映画(80年代和製スプラッター編1)
-鹿島章弘『バイオセラピー』
有名特撮俳優を起用した人体破壊劇場。監督の癖が大体フルチと同じなので実家のような安心感を覚えてしまった。脚本は相当大味だが、ランタイムが30分強なのでどうにか許容できる。細かいことは気にせずにゴアとバイオレンスを楽しむのが吉。ほらやっぱりフルチだ!
-ガイラ(小水一男)『GUZOO 神に見捨てられしもの』
グズーきもいよグズー。なんかトレマーズみたいだよグズー。アイドルを容赦なく触手責め&内臓ブチ破りでSATSUGAIしてくれるグズー先輩マジぱねぇっす!! 飼い主(飼い主ではない)の眼鏡のお姉さんを頭から丸齧りしたり、鈍重そうな見た目に反したすばしっこさ(しかも鏡を通ってワープできるというハイスペっぷり!)で女の子たちを追い詰める姿に惚れ惚れ。グズーと襲われる女の子たちをしっかり同じフレームに収めて撮影してるのも地味に凄い(カットを割って誤魔化さない)。80年代スプラッターの持つ初期衝動的な熱量に好感を覚えた。
最近観た映画(80年代和製スプラッター編2)
-飯田譲治『キクロプス CYCLOPS』
これはかなり好き。まったく思うところがないわけでもないけど、それでも飯田譲治は信用できることを再確認。
まず、阿藤海演じる「単眼鬼」の男の佇まいが絶品。善なのか悪なのか最後までよく分からない立ち回りが謎すぎて困惑できるし、クライマックスの「変身」シーンと「隠し腕」(ジ・Oみたいな表現やめろ!)を使ったバトルシーンもグロ&フリーキーで最高すぎる。
対戦相手の佐野和宏も負けず劣らず“キてる”キャラで、妊婦の奥さんで投薬実験したり、『マリグナント』のガブリエルを彷彿とさせるフォームチェンジを披露するなどの面白ムーブで鑑賞者を魅了してくれる。見るも無惨な肉塊と化した佐野(阿藤と融合してる?)と、彼の妹を同一フレームに捉えたショットは凄惨で儚く、思わずため息が出る美しさだった。
グズー(なんならバイオセラピーも)と同じ、「80年代スプラッターの初期衝動」的なるものを、この時代だけに許されたある種の「特権性」のようなものを本作からも強く感じた。
最近観た映画(新作編)
-瀬々敬久『春に散る』
めっちゃ良かった! 哀川翔の扱いに疑問が残るとか、橋本環奈のパートと横浜流星の母親のパートがノイズになってるとか、クライマックスのスローモーションが野暮すぎるとか気になる部分も多いけど、文字通り「心臓を捧げ」た佐藤浩市の壮絶な「終活」模様と、ボクサーとしての輝かしい未来を捨て、奔る心の赴くままに窪田正孝との試合で完全燃焼した横浜流星の人生の交差が泣き出しそうなくらいエモーショナルで、俺の情緒がグチャグチャに破壊されてしまったな。「今、この瞬間」に煌めく命のなんと鮮烈なことか。そのまばゆさは目にした者を傷付けるかもしれないけど、俺はそんな通り魔に刺されるような一瞬を求めて映画を観てるし、これからも観続ける。
舞い散る桜を探して夜の闇に消える佐藤浩市。時は過ぎ、新社会人として「再々デビュー」を果たす横浜流星。想い出の場所で嗚咽を漏らすも、未来に向かって走り出した横浜をカメラは捉える。ブツギレ気味にフェードアウトする画面と、試合後の写真。この流れ、あまりにも……あまりにも……!!
最近観た映画(旧作編)
-黒沢清『叫』
「赤い服を着た女の幽霊」の完成形。不穏かつ不気味なムードと支離滅裂とした暴力性の発露に震え、違和感を纏い続けていた恋人の真相に仰天しながらも妙に納得してみたり。「ここではないどこか」を夢見ながら結局どこにも辿り着けない役所広司は今回も正しく黒沢映画の主人公。船乗りのニーサンが一服の清涼剤か。