最近観た映画(80年代和製スプラッター編2)
-飯田譲治『キクロプス CYCLOPS』
これはかなり好き。まったく思うところがないわけでもないけど、それでも飯田譲治は信用できることを再確認。
まず、阿藤海演じる「単眼鬼」の男の佇まいが絶品。善なのか悪なのか最後までよく分からない立ち回りが謎すぎて困惑できるし、クライマックスの「変身」シーンと「隠し腕」(ジ・Oみたいな表現やめろ!)を使ったバトルシーンもグロ&フリーキーで最高すぎる。
対戦相手の佐野和宏も負けず劣らず“キてる”キャラで、妊婦の奥さんで投薬実験したり、『マリグナント』のガブリエルを彷彿とさせるフォームチェンジを披露するなどの面白ムーブで鑑賞者を魅了してくれる。見るも無惨な肉塊と化した佐野(阿藤と融合してる?)と、彼の妹を同一フレームに捉えたショットは凄惨で儚く、思わずため息が出る美しさだった。
グズー(なんならバイオセラピーも)と同じ、「80年代スプラッターの初期衝動」的なるものを、この時代だけに許されたある種の「特権性」のようなものを本作からも強く感じた。
最近観た映画(新作編)
-瀬々敬久『春に散る』
めっちゃ良かった! 哀川翔の扱いに疑問が残るとか、橋本環奈のパートと横浜流星の母親のパートがノイズになってるとか、クライマックスのスローモーションが野暮すぎるとか気になる部分も多いけど、文字通り「心臓を捧げ」た佐藤浩市の壮絶な「終活」模様と、ボクサーとしての輝かしい未来を捨て、奔る心の赴くままに窪田正孝との試合で完全燃焼した横浜流星の人生の交差が泣き出しそうなくらいエモーショナルで、俺の情緒がグチャグチャに破壊されてしまったな。「今、この瞬間」に煌めく命のなんと鮮烈なことか。そのまばゆさは目にした者を傷付けるかもしれないけど、俺はそんな通り魔に刺されるような一瞬を求めて映画を観てるし、これからも観続ける。
舞い散る桜を探して夜の闇に消える佐藤浩市。時は過ぎ、新社会人として「再々デビュー」を果たす横浜流星。想い出の場所で嗚咽を漏らすも、未来に向かって走り出した横浜をカメラは捉える。ブツギレ気味にフェードアウトする画面と、試合後の写真。この流れ、あまりにも……あまりにも……!!