宮崎駿『君たちはどう生きるか』観た。思ったよりもずっと良かった。俺はこの映画好き。
別に遺作でもなんでもないのに何故か異様に遺作感が強い。「老境映画」というよりかは「生きながらにして彼岸に渡った人の映画」といった印象がある。
作中の生と死の境界がポニョ以上に曖昧で、全ては冒頭の火災に巻き込まれた主人公が死ぬ前に視た一瞬の幻……みたいなオチでも驚かないレベルの不穏さを漂わせていた。中盤くらいまでは演出が普通にホラー寄りだったのも不穏さの醸成に拍車をかける。生と死が判然としない不気味な中間状態の纏う悍ましさ。そこに「彼岸み」を感じたのかもしれない。
冒険の果てに心を通わせた主人公とヒロインが扉を抜けてそれぞれの時間に帰還するラストもベタだけど心に沁みるものがあって良かった。戻った先で決して逃れられない過酷な運命が待ち受けていたとしても、命は受け継がれていく。産んで、産まれて、生きて、愛したことにきっと意味はある。バラバラに吹き飛んだ世界も、いつの日か鮮やかに蘇るかもしれないね。
やることをやったらスパッとエンディングに入るところも凄く好き。余韻もへったくれもないのが一周して強い余韻を残す。もっとも、エンディング曲はかなり微妙だと思ったけど。
君たち、風立ちぬとポニョが好きな俺にとってはまあまあご褒美みたいな映画だったよ。