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【誰かさんと化け物さん】をテーマにしたアンソロジー。主に一行小説、たまに短歌です。
なにかとおかしなことに巻き込まれがちな黒髪の誰かさんと、なにかとおかしなことを起こしがちな白髪の化け物さんのお話。
【人物画像:鏡合わせの双子メーカー】

原点回帰。
やはり私は創作におけるジャンルの一つであるヤンデレが好きなので、誰かさんをまたワンルームに放り込み、化け物さんとハイタッチをしたのでした。


「この部屋の外は危険だからけして出てはいけないよ」なにをそんな見え透いた嘘をと高を括り自室の玄関を出た瞬間、お隣の一軒家に隕石が降ってくるのを目の当たりにして静かに戸を閉じ、回れ右をして部屋の中へ戻った。

銀灰色 さんがブースト
銀灰色 さんがブースト


 空の彼方に頂上は霞み、いまなお増築を続ける塔の入り口には古びた石碑があり創始者の言葉が刻まれている『この夢の塔がいずれ全ての星と時間を繋ぐ架け橋とならんことを願って』と。


 正面玄関のドアマンは入ってきた客と出ていく客を正確に記録する、花座劇場を訪れる人数よりも無事に出てくる人数が必ず少ないので、減った客の精巧な代役人形を用意しあたかも何事もなかったよう仕組むのに必要な情報だからだ。


 悪霊はとっくに耳の奥へ住み着いていた、見えるだけなら目を閉じればよかった、触れられるなら離れるだけでいい、でも、懐かしい声で名前を呼ばれ続けるのだけは耐え難かった。


 喉に言葉がつっかえてもう一週間になる、その間、私は本当のことは言えず嘘ならば口にできているのだが、存外、本音を言わなくても生活は営めるのだと気づいてしまった。


 近頃は人の空想があまりに精巧な形で人間の五感を惑わすので、空想の方も勘違いをし始めていた、続々と現実に染み出す虚構を見定めて本来あるべき物語へ送還するのが、近頃本格的な食い扶持を繋ぐ手段になりつつある。

「きみは花に似ている、水をやらないとすぐ死んでしまうところが、ほんとうによく似ているよね」

銀灰色 さんがブースト


「きみは僕の絶望を知るべきだ、どれだけ理想に近づきたいと願っても遠ざかるばかりの未熟な筆は言葉を連ねた分だけ足元をぐらつかせて遂には奈落を生み出した、立っていられるわけもない、きみも落ちてしまえばわかる」叩きつけられた嘆きに呼応して足元がぐらぐら崩れ始めてぽっかり口を開けた穴に落下する、無限にも思える落下が始まって間もなく私は声を張りあげた、奈落はせり上がるための舞台装置でもある、足元に床ができた、上昇のさなかにも言葉を編む、私は嬉しい、その絶望はお話を作るものについて回る呪いであり証だから、地上へ戻ると言い負かされそうになるのを堪えた化け物がまごついている、指をさして駄目押しの魔法をかける、星屑が二人を取り巻いてまたたいた、私もその奈落の底を見た、同じ場所にいなくても見上げる空は同じように、友よ、私も同じ穴の中でもがいていたのだ。

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 すべての人間を細胞レベルから海に返してもう一度つくり直してみようと思うんだ、彼は徹夜の仕事に倦み疲れた頬を揉みながら言うので、今にも机に突っ伏してしまいそうな肩にお気に入りのブランケットをかけてやった。

銀灰色 さんがブースト

暑中見舞い用の版画を作っている。今月は色々と創作出来ているので心が安らか。


「どうやら僕ら、世界に二人だけみたいだね」それならこれから先どう生活していくのか、そんな狂乱は、相手のあまりに嬉しそうな様子に飲み込まざるを得なかった、私が下手を打ってこの世に存在するのが彼一人になってしまったら笑えない。


「ごめんなさい、もうしません」受話器に耳を当てると消え入りそうな声で必ず、母とも妻とも違う高い声で一言囁かれる、最近は気にも留めていなかったが信号待ちをしていた交差点で背中を押された時にも同じ声がしたのだ、迫りくる大型車の前へ不本意にも躍り出た私の頭の中ではこんな風に変換された、ごめんなさい、申しません。

くコ:彡もし読者の『僕』が書き手になろうとしたら 

私がとやかく申し上げるより、はるまきごはんさんとキタニタツヤさんのコラボ曲『月光』を聴いていただくのが一番近道なんですが。それまで受け手だった者が発信者となるとき、一番最初の衝動って『あの人みたいになってみたい』になることが多いと、私は思っているんですよね。
あの人みたいなお話を書いて、あの人みたいにキラキラ褒められてみたいって。
でも大抵は想像した通り上手くいかなくて。単に評価されないけど、書いてる自分は好きで楽しいって思えるなら歩いていけるけど、自分が自分の書いたものに納得できずにい続けたら、拗れてしまうんじゃないかなっていう想像です。
文目集でモチーフにしている『僕』(化け物さん)と、「私」(誰かさん)がもしも対立することがあるとしたら、化け物さんが書き手になって、誰かさんみたいになると望んでしまったとき。でも化け物さんは誰かさんの作品が本当に好きだから、書くのならその憧れを本物にしたいけど、自分が書く以上、『誰かさんが描いた本物』には永遠になれなくて、そもそもなっちゃいけないんだと葛藤して最後には憎んでしまうんだろうなあ。

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 そんなにお話が好きならあなたもなにか書いてみればいいのに、気軽に提案してみると途端に彼の顔が曇る、それはしたくないな、僕が無垢にきみの作品を楽しめているのは読者だからだ、自分で書き始めたら間違いなくきみの影を追ってしまう、ささやかな言葉の掬い方、切り取る情景の選別、きみの目を通して観察した視界を僕が手に入れることはないだろうに憧れてしまう、きみのようになりたいのにできない己に落胆して醜く憎むよ、手近にあった鉛筆を造作もなく折りながら化け物は美しく微笑んだ、僕に、きみを憎ませないでおくれ。

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