『アイアンクロー』観たプロレス好きの友人との感想戦がまだ続いてて面白い。向こうはプロレス実話、こっちは映画視点で会話してるからムーブが噛み合うとはいえないんだけど、やりとり(これ自体もまたプロレス)してると、そういえばあそこは…ってまた気づいたりする。結構見落としてるもんである。
キアラ・マストロヤンニがマストロヤンニを演じる?『Marcello Mio』、すごく観たい。このヴィジュアル!マストロヤンニ大好きだったけど、キアラも好き。
https://twitter.com/cinefilDVD/status/1778685293882921092
当時のプロレスにはそんな詳しくないんだけど(周りにはリアルタイムでのプヲタが多い)、ある意味裏切って、ある意味ちゃんとプロレスの本質を掬い上げたバランスだったかも。受けてこそプロレスだし、分厚い身体の重量感がずっしりと効いて、切実に「痛みの伝わる」受けをしてみせるザック・エフロンに今年のプロレス大賞を。ケリー演じるジェレミー・アレン・ホワイト、私は初めて観たと思うけど旬の人らしく彼の登場シーンは来たあ!ってスペシャル感があったな。
リック・フレアーのくだりも、ガッチガチのセメントしかできない(そう生きざるを得ない)ケヴィンが、ギミックを極めた本物のネイチには敵わねえと初めて脱力する(例えるなら、シェイクスピア悲劇にヒュー・グラントみたいな)…つまり、フレアー名人芸があの怒りのアイアンクローを引き出したのを悟ったように見えたな。ファンにはフレアー全然似てねえ!って言われてたみたいだけど、あの流れでここにくるのが納得の良い場面だった。
『アイアンクロー』観た。映画館では初ショーン・ダーキンだ。出遅れたせいでファーストカットどうなるんだろう、どう終わるんだろうとかやけに想像が膨らんで考えすぎちゃったけど、ああそうくるのか!と。まさかあんなカタルシスがあるとは思わなかった。むしろ、そこへ辿り着くまでの受難劇だった。
家族を締め付けて人生に深く食い込んで蝕むアイアンクロー、銃と十字架とトロフィーを信じることの呪縛。ケヴィンが持ち上げるバーベルが、呪いと抑圧と責任の重さを物語る。同時に、イノセントな白ブリーフ(ザックは『ペーパーボーイ 真夏の引力』もそうだった)、パンパンに張り詰めた筋肉と裸足が彼の異質さを際立たせて哀しい。選ばれない者として選ばれし者。
不穏な亡霊映画らしいのは、リングと観客の間に広がる闇と、庭にぽっかり広がる空洞。重低音のドラムロールみたいな音楽。対戦カードが出るとこもやけに不穏だったよ。
当地は遅れて上映の『枯葉』をやっと。ラジオ以前にのっけからバリバリ現代!って感じた。労働者の暮らしは相変わらず厳しいものの、バンドがガールズバンド(好き!)になったりとか『パラダイスの夕暮れ』とは似て非なるところが色々目につく。一番違うのはすごく柔らかいというか愛嬌というか、苦味より甘み増し増しなとこ。そのくらい今は優しさが必要とされる(と思われる)時代なんだろうね。
アルマ・ポウスティとユッシ・ヴァタネンはとてもフレッシュで、フィンランドのライアン・ゴズリング&ミシェル・ウィリアムズって呼びたくなるのは私だけ?『トーべ』も素敵だったアルマのウィンクにグッときた。職場の連帯にもにんまり。あと、『愛しのタチアナ』みたいにさりげなくカッコよく技能を見せるとこがあって(でもこっちは女)、すげー!となった。
そしてめぐり逢い案件だった!赤は小津オマージュなのかな、でもそれ以上に目立つ赤。レンチンして捨てちゃった食事、あれは何がダメだったんでしょうか?私にはわかんなくて気になった。
それにしてもわんこがかわいい。
『こいつで、今夜もイート・イット アル・ヤンコビック物語』って邦題になった『Weird: The Al Yankovic Story』を観た。のっけからオール・ザット・ジャズ!如何にもアル・ヤンコビックの「伝記映画」らしく、まさに人を食った(イート・イット!)パロディ尽くしの英雄の旅だった。いや、何か裏を読ませるかと思えば、そういう物語にすらしないのすごい。
ミュージカルも好評なラドクリフのショウマンぶり、リン・マヌエル・ミランダやジョシュ・グローバンも友情カメオ出演するし、70〜80sスターたちに扮した(といってもあからさまにパロディ)豪華キャストがノリノリ。本家本物というか事実を少しだけ残しつつ、そもそもパロディってハイコンテクストなものだよなあ。気持ち良く笑った。
@vertigonote 早速こちらと、あと「クィア・シネマ」を併読してるところです。両方ともすごく良い…ご紹介ありがとうございます!
イラストレーター。得意ジャンルは映画とスポーツ。赤悪魔者。