核戦争の恐怖が、精神衛生に際立って悪影響を与えるという話は、自分や周囲の人間が非業の死を遂げるだけでなく、人類の営み自体が途切れる恐怖でもあるからだろう。自分や同時代の人間が死んでも、ごくわずかでも後世に影響を及ぼす期待、先人たちの営為もまた受け継がれていく期待、そういうものがすべて無に帰す恐怖というか。
それを考えるとSFでたまにある、子供がなぜかまったく生まれなくなった社会も、それに似た恐慌状態に陥りそう。子供が生まれないことによる世界の終わりへの恐怖に焦点を当てた作品があれば読みたいのだが。