【感想】『鹿乃江さんの左手』青谷真未
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Amazon.co.jp: ([あ]8-1)鹿乃江さんの左手 (ポプラ文庫 日本文学) : 青谷真未: 本
願いを一つだけ叶えてくれるという「魔女」が棲んでいるという噂のある女子校を舞台にした三連作。
三作いずれも、魔女の物語上の機能は基本的に共通しているのだが(魔女が示す魔法の力についてある種のミステリ的な要素があるのが良い)、一作目のラストはあんまり上手く落ちてないなと思った。しかしそこから二作目「闇に散る」と三作目「薄墨桜」はとても好きだった。「闇に散る」では、かつてバレエを習っていた主人公が、文化祭のクラスの出し物でバレエをやるという案に、素人が出し物でできるものじゃないと思わず反発してしまうのだが、クラスメイトの真矢のしつこさに根負けし、彼女に稽古を付けるようになる。真矢は驚くべきスピードで上達し、その才能に微かに嫉妬を覚え始めた主人公の元に、魔女が現れる。ちょっとミステリ要素、怪異要素がある青春小説として楽しめるスリリングな一作で、終盤の展開が画として楽しい。「薄墨桜」は、この女子校の卒業生でもある養護教諭が主人公。三十歳になり、朝起きる時間、着る服、三食の食事まで毎日が変わり映えしない、だがその決まったことを変えずに繰り返すことに安心を感じている節もある主人公は、卒業式を間近に控えた書道部の三年生の冴木から「先生のことが好きかもしれない」と告げられる。冴木から気持ちを向けられたことで自身の学生時代のトラウマを思い出す彼女のもとに、女子高生だったときには現れてくれなかった魔女がやってくる。一作目、二作目のキャラクターが出てきたり、過去と現在で少し構成を複雑化させたりしていて、連作短編としての良さが発揮されている。主人公を大人にし、魔女が示してみせる「魔力」のトリック(?)もやや大がかり(?)になったことでスリリングさが増していたり(曜日説明されてなくね?)、一方で過去回想の切っ先は鋭い(怖すぎる)。でもポジティブな結末になっているのが、最後魔女が遠くから見てニヤって笑ってそうで良いよな。
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